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ジョイスのパリ時代

『フィネガンズ・ウェイク』と女性たち

著者
宮田恭子

ジョイスにとってパリ時代は、前衛作家としての名声を享受した得意の時期であると同時に、多くの苦難を背負った〈火宅〉の日々でもあった。失明の危険を孕んだ自らの眼病に加えて、少しずつ悪化してゆく愛娘ルナアの精神の病(統合失調症)への不安、とりわけ『フィネガンズ・ウェイク』執筆の辛苦が、彼の心身を苛んだ。この苦難を乗り越えて、ジョイスが稀有の文学創造を完遂できたのは、数人の並外れた女性たちが陰で彼の仕事を支えたからである。「シェイクスピア・アンド・カンパニー書店」のシルヴィア・ビーチや「トランジション」誌のマライア・ジョラスをはじめとする女性陣の助力がなければ、現代文学の極北ともいうべき諸作品は陽の目を見なかったであろう。また、バレエをあきらめ、ベケットとの恋に挫折しつつ、装飾大文字の創作に励むルチアの存在は、その病とともに、『フィネガンズ・ウェイク』のテ一マと深く関わっていただろう。本書は、主に二つの側面から、パリ時代のジョイスの創造生活を照射する。一つは、裏方に徹してさまざまな支援を行なった女性陣の鮮やかな肖像である。二つ目は、その精神の闇において父親の創造に深く関わったルチアの詳細な病跡である。ジョイスのパリ時代への貴重な展望であり、『フィネガンズ・ウェイク』理解への重要な寄与。


「ジョイスのパリ時代」の著訳者:

宮田恭子
みやた・きょうこ
1934年、石川県に生まれる。東京大学教養学部敦善学科イギリス分科を経て、1969年、大学院人文科学研究科比較文学比較文化修士課程を修了。元玉川大学教授。1964年、「アイリス・マードック『鐘』試論」によりシェイクスピア賞受賞。著書『ジョイス研究』(小沢書店、19889)、『ジョイスの都市』(小沢書店、1989)、『ウルフの部屋』(みすず書房、1992)。訳書 S.ジョイス『兄の番人――若き日のジェイムズ・ジョイス』(みすず書房、1993)、R.エルマン『ジェイムズ・ジョイス伝1・2』(みすず書房、1996)、V.ウルフ『ロジャー・フライ伝』(みすず書房、1997)、F.スポールディング『ヴァネッサ・ベル』(みすず書房、2000)、J.ジョイス『抄訳 フィネガンズ・ウェイク』(集英社、2004)。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「ジョイスのパリ時代」の画像:

ジョイスのパリ時代

「ジョイスのパリ時代」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/320頁
定価 3,780円(本体3,600円)
ISBN 4-622-07227-0 C1098
2006年6月9日発行

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