みすず書房

批評と真実

CRITIQUE ET VERITE

判型 四六判
頁数 136頁
定価 2,750円 (本体:2,500円)
ISBN 978-4-622-07235-5
Cコード C0098
発行日 2006年8月10日
備考 現在品切
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批評と真実

ロラン・バルトの『ラシーヌ論』(1963)は、レーモン・ピカール教授の攻撃を受けた。主要な新聞雑誌はこぞって「新しい批評」を皮肉ったり、検閲したり、断罪したりした。しかし、「生まれつつある構造主義の怪物」に対する「古い批評」からの集団的批判の底には、曖昧な公理やひそかな偏見があるのではないか? バルトは「もっともらしい批評」が常套手段として用いる「神話」を、根底から揺るがしてゆく。

そもそも、今日において批評は何を探求すべきか? 言語学や精神分析の発達は、現代文学(マラルメ、ロートレアモン、ランボー、プルースト、カフカ以降の)の新たな言語、言語そのものについても語ることを要請している。もはやテクストを字義のうちに閉じ込めておくことは不可能である。テクストが生きているのは「象徴」によってでしかないのだから。

本書はただ単に、期限切れの論争に打たれた終止符であるだけでなく、解釈の核心問題とのかかわりにおいて、われわれの文化に起こっている本質的な変容に光をあてた著作である。文学作品をめぐって「科学」と「批評」と「読書」が一つになるとき、「批評とは、われわれが参入してゆく歴史の瞬間、われわれをエクリチュールの一貫性へと、エクリチュールの真実へと導く、あの歴史の瞬間にほかならない。」