みすず書房

ビートルズの映像や音楽の利用は、なぜむずかしいのか? 創作と盗作を分かつものとは何かなど、重要な様々の実例で語る、「知的財産権」を理解するための絶好の入門書である。
ハイクオリティーのコピー機やデジタルカメラの急速な普及で、著作権の問題が盛んに議論されている。IT(情報技術)の急激な進歩のペースに、作品や情報のコピーに関する権利の知識が追いついていない現状である。誰しもが情報発信者となるインターネット全盛の今日、一人ひとりが著作権について理解しておく必要があるだろう。「うっかりしていた」とならないように。
本書は、私たちが日常生活のなかでかかわりをもつ、文章や音楽、絵画、写真、映像の保護ルールの再検討を試みた。こうした問題に明るくない人も入りやすいように、身の周りのエピソードを交えて平易な文章で語る。「知的財産権」問題の入門に格好の書となっている。
グーテンベルクが独占した「印刷術の栄誉」や「ビートルズ東京公演」の映像、「なぜ盗作問題が起きるか」など、歴史的背景や芸術・表現活動、象徴的事件に触れながら、「知的財産権」(著作権、特許権、商標権、肖像権など)の基本的な考え方を整理する。また〈知財は人類の共有財〉という視点から、「創造性」と発明の系譜や、デジタル時代の知的財産法のあり方も模索する。

目次

第1章 ようこそ著作権の世界へ——ディケンズへの答え
第2章 過去の映像と権利処理——ビートルズと錬金術
第3章 著作権法は時代遅れか——デジタル時代のラスコーリニコフ
第4章 創作する人とお金を出す人——写真館と著作権
第5章 図書館と知的財産権——鉄鋼王カーネギーの遺産
第6章 書物という知的財産——王座以上の歓び
第7章 発明と名誉の微妙な関係——グーテンベルクは偉いか
第8章 創作と盗作の間——「模倣の達人」は汚名か
第9章 伝統芸能は誰のものか——聖なるバンジージャンプ
第10章 ブランド化する街——ボストンの誘惑
第11章 誰にでも肖像権はある——サリンジャーの沈黙
第12章 創造性と知的財産——保護か利用か

書評情報

仲俣暁生(フリー編集者)
週刊文春2007年
週刊朝日
2007年3月9日号
レコード芸術
2007年3月号
信濃毎日新聞
2007年2月25日(日)
愛媛新聞
2007年3月4日(日)
京都新聞
2007年2月25日
佐藤卓己(京都大学助教授)
読売新聞2007年2月18日(日)