みすず書房

サン=テグジュペリ デッサン集成

判型 A4変型
頁数 328頁
定価 16,500円 (本体:15,000円)
ISBN 978-4-622-07283-6
Cコード C1098
発行日 2007年4月25日
備考 在庫僅少
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サン=テグジュペリ デッサン集成

「なにが私をとらえたかはわかりません。私は一日中デッサンをしていて、そのために時間は短いように感じられます。私は自分に向いているものを発見したのです。木炭のコンテです。クロッキー用の画帖も買いました。一日の出来事や身振り、同僚たちの微笑や犬のブラックの無遠慮などを、描けるかぎりそこに描いています。[…]一冊目が終わったらお送りしましょう。でも——ママン——送り返していただくことが条件ですよ」
サン=テグジュペリは幼いころから、その目に映るものの姿、心に立ち現れたイマージュを紙の上に写しとり、彩りをあたえる喜びを知っていた。子ども時代を過ごしたサン=モーリス・ド・レマンスの城館で、学生時代とそれにつづく若い時代を過ごしたフランスの地で、飛行機を駆った西サハラ、南米で。そして、第二次大戦下に亡命者として身をおいたニューヨーク、さらに、さいごの日々を送った北アフリカ…とくに気に入って用いた高級な薄葉紙や画帖ばかりではない、ホテルの用箋や領収書の裏、自筆原稿の余白など、どんな紙片もたちまちのうちに彼のデッサンで満たされた。その多くは家族や友人の手にわたってサン=テグジュペリの手元には残らなかったし、「失敗作」だという理由で投げ捨てられたものも数しれない。
身辺雑記的なもの、ひとびとの肖像、美しいもの、怪奇幻想的なもの…やがて、さまざまな紙片の上に、機会あるごとにいつも同じひとりの子どもが姿を現すようになる。世界中の人々に今も愛される〈小さな王子さま〉の誕生である。
友人の手によってごみ箱から救い出されたデッサンや、散逸していた紙片など、未発表の350点余を含む500点近くを、初めてここに集成。デッサンとともに紙片に書きつけられたサン=テグジュペリのテクストや、デッサンの描かれた背景に関する詳細な紹介をほどこして、一巻とする。

書評情報

青木淳(建築家)
読売新聞「本のよみうり堂・夏休みの1冊」2015年8月9日