みすず書房

『嵐が丘』を読む

ポストコロニアル批評から「鬼丸物語」まで

判型 四六判
頁数 296頁
定価 3,520円 (本体:3,200円)
ISBN 978-4-622-07295-9
Cコード C1097
発行日 2007年5月10日
備考 現在品切
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『嵐が丘』を読む

「『嵐が丘』という小説は、たがいに矛盾する要素を無限に含んだ作品である。ちょうど160年前の1847年にはじめて出版されて以来、この本に加えられた無数の解釈例の歴史を見れば、この小説がいかに複雑多様で矛盾に満ちた作品であるかがわかる。その解釈例を見ることは、同時に文学批評理論の変遷の歴史を見ることにもなる。」(あとがき)

作品発表の時点から『嵐が丘』の受容は毀誉褒貶、混乱をもって始まる。批評家たちの〈読み〉と評価も時代とともに千変万化し、一定しない——これは情熱的な恋愛劇なのか、はたまた、怪物と自我の賛美なのか? いずれにせよ、この傑作はつねに不可解な〈謎〉を孕み、決定的な解釈はいまだ見出されず、未解決のまま現在に至っている。
本書は、ロマン主義の批評からニュー・クリティシズム、神話と精神分析、イーグルトンなどのマルクス主義批評を経て、フェミニズムや構造主義・ポスト構造主義まで、多様かつ魅力的な解釈例を紹介してゆく。さらには視点を、『嵐が丘』のテクストの外へと拡大し、ポストコロニアル批評や河野多恵子・水村美苗による作品、ブニュエルや吉田喜重の映画、漫画までを扱う。世界文学史上の傑作をめぐる解釈戦略のスリリングな歴史を詳細に辿った快作。

目次

第1章 はじめての『嵐が丘』
第2章 形式への関心
第3章 手法の発見
第4章 神話と精神分析
第5章 マルクス主義批評
第6章 フェミニズム批評
第7章 構造主義的批評
第8章 不確定原理
第9章 テクストの外へ——カルチュラル・スタディーズ
第10章 テクストの外へ——『嵐が丘』を書き直す
第11章 テクストの外へ——『嵐が丘』を映像化する

あとがき
索引