みすず書房

サー・ウォルター・ローリー(1554-1618)。エリザベス女王の寵愛を受けた宮廷人。スペイン本土を襲撃した軍人。北米東海岸やアイルランドに植民した探検家。八面六臂の活躍をしたこのルネサンス人は、南米ギアナでの黄金探しが失敗した廉で公開処刑され、その生涯を閉じた。
だが、ローリーが最期に断頭台から放った一世一代のスピーチが、反王権運動に影響を与え、その後のイギリス史を大きく変えることになる。
「さて、断頭台でなされたスピーチは、緻密な構想と仕掛けの産物だった。すなわち、そのスピーチは作品であって、事実を語ったものではなかった。(…)
ローリーのスピーチが、イギリス近代史のなかでもっていた、積極的な意義を一言でいうならば、早い時期における王権への抵抗にあった。」(本書より)
スピーチから窺える、ローリーの自己演出の真意とは何か。彼をロンドンへ連行した役人スタックリーは、ほんとうに狂死したのか。研究史を書きかえる、瞠目の歴史物語。

目次

まえがき

序章 ローリーの生涯
第1節 女王と地方
第2節 スペイン嫌い
第3節 植民活動
第4節 秘密結婚その他

第1章 最後の旅
第1節 横領のプリマス
第2節 驚愕のシャーボン
第3節 仮病のソールズベリー
第4節 謀略のロンドン

第2章 ロンドン塔
第1節 ハラスメント
第2節 非公開裁判
第3節 処刑の前夜

第3章 断首
第1節 断首台のスピーチ
第2節 スピーチの特徴
第3節 スピーチの意味

第4章 処刑のあと
第1節 讃美と後悔
第2節 政府の『宣言』
第3節 スタックリーの『弁明』と『請願』

第5章 スタックリー
第1節 コイン偽造説
第2節 孤島で狂死説
第3節 真実

あとがき
図版リスト
索引

関連リンク