みすず書房

遠近の回想【増補新版】

DE PRES ET DE LOIN

判型 四六判
頁数 384頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-07432-8
Cコード C1010
発行日 2008年11月20日
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遠近の回想【増補新版】

20世紀という時代を深く生き抜いた思想家レヴィ=ストロースは、自分について語ることが少なかった。旧版では、文化人類学者としての生涯と精神の軌跡とを、45歳年下の鋭敏な聞き手を得て、のびのびと楽しく語っている。今回の増補新版は、その2年後に、旧版への反応を踏まえて行なわれた対談「二年後に」を併せて収める。
話題は多岐にわたり、まず生涯の節目となった出来事を克明に語る。ブラジル滞在、亡命先のニューヨークで出会ったブルトンやエルンスト、パリでのラカンやメルロ=ポンティとの交流、1968年のパリ五月事件への反応、自らの構造主義的思考に決定的な影響をあたえたヤーコブソンの存在…。
著書の1冊1冊について意図や背景を述懐する部分では、〈自然から文化への移行〉という壮大なテーマを生涯追求し、各々がその変奏曲であったことが浮彫りにされる。
さらに、ワーグナーやコンラッドへの思い入れ、劇作家になりたかった夢など、その人間的魅力がふんだんに引き出され、発見も詰まっている。彼自身による最適なレヴィ=ストロース入門ともいえよう。

目次

プロローグ

第一部 ドン・キホーテの帰還
1 オッフェンバックからマルクスへ
2 フィールドに立つ民族学者
3 ニューヨークの放浪生活
4 旧世界への帰還
5 数字8の秘密
6 パリの構造主義
7 コレージュ・ド・フランスにて
8 緑の礼服——アカデミー・フランセーズ
9 「退屈することはありません」

第二部 精神の法則
10 結婚の掟
11 感覚的世界
12 スー族、哲学者、科学
13 歴史の掃き溜めのなかで
14 鳥の卵採りの後を追って
15 思考の働き

第三部 複数の文化、単一の文化
16 人種と政治
17 文学
18 絵画の内容
19 音楽と声

エピローグ
二年後に


訳者あとがき
人名索引

書評情報

青木保(文化人類学)
毎日新聞2009年12月20日(日)
長谷川宏(哲学者)
婦人之友2010年5月号