みすず書房

日中和平工作

回想と証言1937-1947

判型 A5判
頁数 440頁
定価 17,600円 (本体:16,000円)
ISBN 978-4-622-07438-0
Cコード C3021
発行日 2009年3月25日
備考 現在品切
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日中和平工作

〈私が独断で協定調印と同時に、日本軍の自発的撤退を発言したのは、記述の通り日本軍の戦略態勢が極めて不利で、且つ危険であったから、敢てこの提案をしても、却て日本軍の現状に適合するので、必ずや作戦当局を説得して、同意せしめ得る、と判断したからである。〉(「第一 蘆溝橋事件」より)
〈私は「最初は亡命か」と思ったですよ。彼〔陳公博〕は「亡命じゃない」と、こう言うんですよ。「私は逃げ隠れするんじゃない。亡命するもんじゃない。ただ、ある人が、南京におっては接収に邪魔になる、一時場所を避けたほうがいいと言うから、そこでどこにしようかと考えて、日本に行きたい」とこういうことを言ったですね。〉(「今井武夫、その後の証言」より)
日中戦争の発端となった蘆溝橋事件では、北平(北京)駐在の武官として、現地停戦協定に携り、終戦時には、重慶政府と最初に会談を行い、南京にて邦人帰還の任に当たった陸軍軍人、今井武夫。戦争中は、汪兆銘工作や、重慶政府との極秘の「桐工作」など、中国との和平工作に関わった。かつて『支那事変の回想』(小社刊・1964年、新装版・1980年)として刊行された回想録に、著者による加筆、読売新聞社刊『天皇の昭和史』の取材テープを起こした証言、高橋久志(軍事史学会会長)による解説を新たに加えて、この政治史・軍事史の重要な資料を増補新版としてお届けする。

目次

序文  今井貞夫
凡例
今井武夫略年譜
地図
自序
第一 蘆溝橋事件
事件の勃発/早朝の電話/不思議な予告/事件直前の華北情勢/麻がらで狼を打つ/蘆溝暁月/現地協定の成立/運命の廟議決定/危険な火遊びするもの/旧西北軍の動向/最初の不法射撃/通州事件と殷長官救出/事件の余話
第二 日華和平工作(大東亜戦争開戦前)
其の一 汪兆銘政権の樹立/トラウトマン独逸大使の仲介/董道寧と高宗武の来朝/中国和平派の活躍/重光堂会談/汪、?の論争と汪の重慶脱出/近衛声明と汪の通電/汪の上海到着と渡日/呉佩孚工作/青島会談と高、陶の脱走/和平国民政府の南京遷都
其の二 桐工作/重慶直接和平の意義/鈴木、宋、香港の会見/香港会談/鍵穴から秘密写真/澳門会談/交渉打切り/後日物語り
其の三 日華和平の各種路線/一、孔祥熙を通ずる路線/二、姜豪の路線/三、華北要人とスチュワート路線/四、銭永銘の路線
第三 比島バターン戦に参加
大戦参加の準備/戦場に向って熱帯地の行軍/猪突して戦力激減/リマイ山頂に輝く大日章旗/捕虜処刑の怪命令/密林戦とバターン死の行軍
第四 大東亜省に勤務
対華新政策の実施と国民政府の参戦/日華同盟条約及び大東亜会議
第五 日華和平工作(大東亜戦争開戦後)
其の一 繆斌工作
其の二 河南会談の手遅れ/戦線を越えた連絡/河南旅行/新站集の会談
其の三 スチュワートを廻る工作
其の四 何世楨工作
其の五 日華和平工作に関する観察/日本側内部の実情/中国側の内情
第六 中国大陸の終戦
其の一 支那派遣軍の最後/南京最後の様相/?江に飛ぶ/勝敗両者の友情/南京の受降調印式
其の二 南京国民政府の崩壊/陳公博主席の渡日/和平政府要人の最後
其の三 終戦の後始末/邦人の還送開始/帰還待機間の日本軍/総司令部の集中営生活/連絡班の残留/連絡班の撤収
資料
今井武夫、その後の証言
解説 高橋久志
人名索引

書評情報

吉井文美
史学雑誌2009年10月第10号

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