みすず書房

ナラティヴの権利

戸惑いの生へ向けて

判型 四六判
頁数 352頁
定価 4,620円 (本体:4,200円)
ISBN 978-4-622-07485-4
Cコード C1010
発行日 2009年8月25日
備考 現在品切
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ナラティヴの権利

「日々を生きるなかで迫られる判断はわたしたちに戸惑いをもたらす。ナラティヴの場は、大文字の歴史のような超越的で固定化された理念あるいは国家制度のもとには存在しない。それは、他者のもとで自己の反復が起きるという奇妙な時間性にこそ求められるべきものである」。
サイード、スピヴァクと並び立つポストコロニアル思想の雄バーバ。その思想的遍歴を通じて代表的な論文をまとめた、日本語版オリジナルの著書をお届けする。
その名を一躍高らしめた「散種するネイション」から、ベンヤミンとアレントに触発された芸術論「アウラとアゴラ」、フロイトを自在に読み替えるジョーク論「冗談はさておいて」、そしてマイノリティの異種混淆的なアイデンティティを描くコスモポリタニズム論「振り返りつつ、前に進む」へ。さらに、みずからがインドのマイノリティ(パールシー)としての生い立ちを語る、二本のインタビューも収録する。「倫理的な意味として生き延びていくということがあります。それは、自分が固執しているような経験を異化する姿勢のことです。(…)自分自身の住処をたえず作りつづけ、移動させ、移し替え、運動させていくといった経験を意味するものなのです」。
複雑な思想地図にバーバを位置づけなおす懇切な「訳者解題」をも付して、難解な思想の全体像がここに明らかになる。
(カバー裏写真は、ジョゼフ・コンラッド[左]とV・S・ナイポールの肖像画の間に立つバーバ)

目次

序論
ナラティヴの権利
ナラティヴの可能性
アウラとアゴラ——他者との交渉に開かれた陶酔、そして隙間から語ること
冗談はさておいて——自己批判的な共同体の理念について
ネイション論からグローバル状況へ
散種するネイション——時間、ナラティヴ、そして近代ネイションの余白
振り返りつつ、前に進む——ヴァナキュラー・コスモポリタニズムに関する覚書
みずからを語る
アイデンティティのはざまで
理論を生き延びていく

[訳者解題]ポストコロニアリズムという言説——ホミ・バーバ その戦略と臨界点
訳者あとがき

書評情報

橋本哲也(東京経済大学教員)
図書新聞2009年12月5日(土)

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