みすず書房

性同一性障害

児童期・青年期の問題と理解

GENDER INDENTITY DISORDER AND PSYCHOSEXUAL PROBLEMS IN CHILDREN AND ADOLESCENTS

判型 A5判
頁数 560頁
定価 8,360円 (本体:7,600円)
ISBN 978-4-622-07532-5
Cコード C3011
発行日 2010年6月18日
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性同一性障害

性同一性障害とは、自分の体が男女どちらかの性別に属しているかを認識しつつ、自分の人格は別の性であると確信している状態といえる。
日本においてもメディアを通して「性同一性障害」という言葉を耳にする機会は多くなった。しかしその概念の詳細を理解するのは未だ一部の人に限られるのが実情であろう。本書は豊富な臨床データにもとづき、きわめて実証的に性同一性障害の全体像を明らかにしようとする試みである。
大きな特徴は児童期に焦点を当てていることだ。当事者の多くは子どもの頃から心と体の性の違和感に悩んでいることが分かってきたが、これまで性同一性障害の受診や研究のほとんどは成人を対象にしたものだった。本書は家族療法や心理療法などを通して子どもの心にアプローチすることを試みる。
性同一性障害の診断や研究においては、男らしさや女らしさの外見よりも、本人が自分の性をどう感じるかがとりわけ重要である。当事者と家族への膨大な調査にもとづき、あらゆる角度から性同一性障害の全貌に迫る本書は、性同一性障害を理解するための基本文献となるに違いない。

目次

序文

第1章 概観
術語  
歴史的背景  
本書の目的  

第2章 病態像
同一感の陳述 
異性装  
おもちゃとロールプレイ 
仲間関係  
わざとらしさと声  
解剖学的性差に対する違和感  
荒っぽい遊び 

第3章 疫学
有病率  
発生率  
紹介受診率における性差 

第4章 診断とアセスメント 
診断上の問題  
アセスメント  

第5章 関連する精神病理について 
性同一性障害男児のCBCLデータ  
性同一性障害女児のCBCLデータ  
関連する精神病理のその他の尺度  
関連する精神病理と性同一性障害の関係について  
全体のまとめ  

第6章 病因論——性同一性障害および関連する性心理学的状態の生物学的研究 
初期の生物学的研究  
行動の遺伝学  
分子遺伝学  
胎生期性ホルモン  
胎生期の母体へのストレス負荷  
認知能力、神経心理的機能、および神経解剖学的構造  
神経解剖学的構造と人体計測法  
同胞性別比と出生順位  
気質特徴——活動性レベル、荒っぽい遊び  
身体的な魅力  
生物学的研究のまとめ  

第7章 原因論——心理社会的研究 
性別割当て  
出産前の親の性別の好み  
社会因による強化  
母‐息子関係——量的な側面  
母親の性心理的発達  
母親の情緒的な機能  
父親‐息子関係——定量的側面 
父親の情緒的な機能  
自己社会化  
性同一性障害女児における性心理的影響  
心理社会的研究のまとめ 


第8章 臨床的成因モデル 
一般的因子  
特異的因子  
男児の成因モデルのまとめ  
女児の成因モデルのまとめ  

第9章 治 療 
治療的介入——理論的根拠と倫理的問題  
子どもの治療  
親への対応  
子どものために ——治療上オプティミズムかニヒリズムか  

第10章 フォローアップ
グリーンの研究(1987)およびその他の研究  
長期的治療効果に関するエビデンス  
性指向と性転換症の相関  
トロントのフォローアップ研究——暫定的結果  

第11章 思春期における性同一性障害 
臨床像  
付随する特徴  
経過  
治療  
フォローアップ  
鑑別診断  

第12章 思春期における服装倒錯的フェティシズム 
成人の服装倒錯的フェティシズムの記述現象学  
思春期の服装倒錯的フェティシズムに関する文献の概説  
臨床的特徴  
病因論  
治療  

第13章 思春期における同性愛
事例提示  
「カミングアウト」  
同性愛的発達理解のためのいくつかの理論  
臨床上の対応  


訳者あとがき
参考文献
索引

書評情報

針間克己
こころの科学2010年11月号№ 154

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