みすず書房

「古い写真帳を開くと、ほとんどが死んでしまった昔の仲間たちが、わたしを見つめている。それは少しばかり悲しい喜びなのではあるが、別の日には、虚無との対面ともなる。若くて、魅力的で、本当に美しかった男や女たち。彼らは絶対に老いたりすることなどありそうもなかった。だが、その一瞬のちに、彼らは墓のなかにいるんだ、遺灰になってしまったのだと思わせられるのは、まったく耐えがたいことだ。わたしはアルバムを閉じるしかない。
こうした昔の写真を前にすると、わたしは、現在とは、ひとつの異国なのではないかという印象を禁じえない。わたしはその異国に追放されて暮らしているのである。」(本書「追放されて」より)

名作『ユリシーズの涙』で愛犬と世界の犬たちの逸話を楽しく語ってくれた90歳のフランス作家が贈る、歴代の愛機と写真家たちの思い出と、数多の写真にまつわるアネクドート集。グルニエのファンはもちろん、カメラと写真、人生を愛するすべての人々のための、言葉によるアルバム。

目次

「写真について語ることは……」
肖像写真をプリントしてもらう
「ベビー・ボックス」
A・G・F・A
現像室での夏
ネガのヌード写真
残るのは、この微笑みだけ
ライカのせいで
新しいアグファ
逆光
ロープウエーのなかで
タルブ駅での一枚の写真
貧乏人のローライフレックス
ハイデガーの犠牲者
「フォクトレンダー」の呪い
女性とライカについてもう一度
ひとつの芸術
カラー写真
フォーシング
骨壷
シャルル・デュランの病室
サン=ジェルマン=デ=プレ
サックス奏者
運命
アン、ドゥー、トロワ!
聖堂参事会員とカメラマン
残酷さ
オスティアの海岸
罪の天使
新聞の写真について
ジゼルの恨み
警察の介入
好みの写真家は、各人各様
公式のイメージ
ひとつの源泉
追放されて
オリンパスの白鳥の歌
犬やヤギたち
肖像写真の弁証法

訳者あとがき

書評情報

堀江敏幸
毎日新聞2011年12月25日(日)
渡邊十絲子(詩人)
信濃新聞2011年12月18日(日)
今福龍太(文化人類学者)
読売新聞2011年12月18日(日)
日本経済新聞
2011年11月27日(日)
大島洋(写真家)
アサヒカメラ2012年2月号
池内紀(ドイツ文学者・エッセイスト)
サライ2012年2月号
石川直樹(写真家・作家)
朝日新聞2012年12月19日(日)

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