みすず書房

「百メートル、四百メートルの競争では、往きと帰りがない。鉄道で言えば単線である。マラソンは、往路があって復路のある複線である。いまどき、単線は古い、と言ってもよいかもしれない。
人生五十年、といった時代は、単線でよかった。それしか走れなかったが、いまや、人生八十年である。単線ではもたない。折返してくる複線がいる。ものの見方にしても、若いときの一方的な思考では、後半で息切れする。復路の世界はほとんど新世界である。
人生は一生ではなく、二生になる。そう考えるのが人生複線の思想である」(あとがき)

高齢化の社会を迎えて、年寄りはもとより、若者にとっても人生の展望を再考する時代が到来した。『忘却の力』と『失敗の効用』につづく、人生をめぐるヒントに満ちたエッセイを集成。

目次

I
言文近接/英文科の運命?/留学についての雑考/共生の経験/新経験主義/地理的思考/筆舌につくし難し/第五人称の読者/脱サイレント・モノローグ/辞書のイデオロギー/文章アーキテクトーニックス/球面論理/墓にむかう道/冗談はこわい/あの世からの助け

II
三河の風/アシはヨシなり/我が道を往く/英文科と文化的ナショナリズム/春は春/失敗の効用/ヨコ型コミュニケーション/コモン・センスが危い/シッタシズム文化/遠方の友/地下水の思想/求む第四極/近代教育の迷妄/庭の蜜柑/グッド・モーニング

III
月曜日/倶楽部?/家なき子たち/聖貧の思想
ひとつでは多すぎる

あとがき

書評情報

出版ニュース
2014年4月下旬号

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