みすず書房

〈毎週日曜日の午後11時からNHKで放映される韓国ドラマ「トンイ」を必ず見ている。その第11回が終わった瞬間、日付が変わり、4月1日となった。
今日から日記をつけることにした。竹内好は51歳のときから、『みすず』に日記を連載し始めた。私も50歳…〉

60年代という時代状況の中で書かれたその「日記」は、竹内好が自覚的に選び取ったスタイルであることに、著者は気づく。たとえ身辺雑記であれ、後の時代を生きる者にとっても、みずから近過去を理解するためにも、日記を書き、読むことは重要な方法ではないか。
本書は、2013年4月1日から2015年3月31日までの2年間、『みすず』誌に連載された「日記」を一書にしたものである。
国家の横暴が目に余る時代のなか、大学人としての仕事や、作家として執筆に追われながら、政治学者として世の動向を分析し、『昭和天皇実録』はじめ皇室の動きを観察し、鉄道旅行をつづけ、麺類を食す。日々変わりないようにみえる日常生活を記しながらも、そこからは、個人レベルであれ、社会や国家のことであれ、微妙な変化の兆しを読み取ることができるだろう。
著者の新たな試みをとおして、多方面にわたる著者の関心事をともに味わいながら、ともに生きる時間と場へも目を向けていただきたい。

目次

2013年 4月-12月
2014年 1月-12月
2015年 1月-3月
あとがき

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