みすず書房

1960年代半ば、東芝重役の父が設立した美術画廊を任された“ベイリィ”こと加賀谷澄江(1927-2003)は、持ち前のポジティブな性格と欧米仕込みのセンスで一目置かれるオーナーとなる。最初期より香月泰男、麻生三郎、野見山暁治といった実力作家に愛され脚光を浴びたみゆき画廊は、才能豊かな作家にチャンスを与える貸画廊のスタイルを貫き、いつしか“若手作家の登竜門”という独自の地位を築く。
80年代初めにアシスタントとして入社した著者は、お嬢様育ちで楽天家の澄江を永く支えてきた。親子のような女性二人による画廊運営は、バブル経済や美術ブームを経て順調に見えたが、澄江の体が病魔に侵され暗雲が垂れ込める。オーナー不在の画廊運営と育児との両立、ケアハウスでの献身的介助、そして別れ……。
2016年3月、創立50周年と同時に閉廊を決意した現オーナーの著者が、澄江の波瀾万丈の生涯をたどり、凛とした生き方を再発見してゆく。美術画廊という営み、個性的な作家群像、銀座の街なみや美術界のうつろいをさわやかに描く記念誌。

目次

はじめに——ドアのむこうに広がる世界

I 画廊への扉
「お留守番でいいのよ」
ベイリィさんという画廊主

II 加賀谷澄江だったころ
ベイリィさんの少女時代
青春時代、そして国際結婚

III みゆき画廊の誕生
貸画廊という選択
若い作家を応援する画廊
野見山暁治先生のこと
大沢昌助先生のこと
入江観先生のこと
石坂泰三さんのこと
若手作家の登竜門
東芝からの独立
サロンとしてのみゆき画廊
素顔のベイリィさん

IV 二人三脚
画廊の仕事
銀座のアフターセブン
働く女性として
窮地を救った大仕事
信念を持って

V 変化
病名告知
画廊とケアハウスと保育園
息子とベイリィさん
閉ざされた世界で
お別れのとき

VI 光のなかで
みゆき画廊を引き継ぐ
ベイリィさんに守られて
五十周年、そして閉廊の決断

初めから決まっていた——あとがきにかえて

解説 「みゆき画廊という文化があった」  芥川喜好
みゆき画廊 展覧会全記録

書評情報

上原隆
産経新聞2016年4月17日
日本経済新聞「あとがきのあと」
2016年5月8日
中村尚代
しんぶん赤旗2016年6月19日(日)
西條博子
週刊朝日2016年7月8日号
岡崎武志
サンデー毎日2016年5月1日号
鈴木博志(編集委員)
北海道新聞2016年4月24日
北日本新聞(共同)
2016年4月9日
岡崎武志
學燈2016年秋号