磁力と重力の発見 2
ルネサンス

判型 | 四六判 |
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頁数 | 328頁 |
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-08032-9 |
Cコード | C1340 |
発行日 | 2003年5月22日 |
備考 | 在庫僅少 |

判型 | 四六判 |
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頁数 | 328頁 |
定価 | 3,300円 (本体:3,000円) |
ISBN | 978-4-622-08032-9 |
Cコード | C1340 |
発行日 | 2003年5月22日 |
備考 | 在庫僅少 |
古代以来、もっぱら磁力によって例示されてきた〈遠隔力〉は、近代自然科学の誕生をしるしづける力概念の確立にどのように結びついていったのか。第2巻では、従来の力学史・電磁気学史でほとんど無視されてきたといっていいルネサンス期を探る。
機械論・原子論的な要素還元主義と、物活論・霊魂論的な有機体的全体論のふたつの自然観がせめぎあった古代ギリシャのあと、ローマ時代からキリスト教中世にかけては後者が圧倒的優勢を誇る。ではその次にくるルネサンスの時代に遠隔力の観念を担い、近代初頭へとひきついだものはいったい何だったのだろうか。ガリレイやデカルトの機械論哲学がアリストテレス‐スコラにとってかわる新哲学として現れて、科学革命をなしとげたなどという単純な図式は、とうてい成り立たないのではないか。
本書は技術者たちの技術にたいする実験的・合理的アプローチと、俗語による科学書執筆の意味を重視しつつ、思想の枠組としての魔術がはたした役割に最大の注目を払う。脱神秘化する魔術と理論化される技術。清新の気にみちた時代に、やがてふたつの流れは合流し、後期ルネサンスの魔術思想の変質——実験魔術——をへて、新しい科学の思想と方法を産み出すのである。
第九章 ニコラウス・クザーヌスと磁力の量化
1 ニコラウス・クザーヌスと『知ある無知』
2 クザーヌスの宇宙論
3 自然認識における数の重要性
4 クザーヌスの磁力観
第十章 古代の発見と前期ルネサンスの魔術
1 ルネサンスにおける魔術の復活
2 魔術思想普及の背景
3 ピコとフィチーノの魔術思想
4 魔力としての磁力
5 アグリッパの魔術——象徴としての自然
第十一章 大航海時代と偏角の発見
1 「磁石の山」をめぐって
2 磁気羅針儀と世界の発見
3 偏角の発見とコロンブスをめぐって
4 偏角の定量的測定
5 地球上の磁極という概念の形成
第十二章 ロバート・ノーマンと『新しい引力』
1 伏角の発見
2 磁力をめぐる考察
3 科学の新しい担い手
4 ロバート・レコードとジョン・ディー
第十三章 鉱業の発展と磁力の特異性
1 一六世紀文化革命
2 ビリングッチョの『ピロテクニア』
3 ゲオルギウス・アグリコラ
4 錬金術に対する態度
5 ビリングッチョとアグリコラの磁力認識
第十四章 パラケルススと磁気治療
1 パラケルスス
2 パラケルススの医学と魔術
3 パラケルススの磁力観
4 死後の影響——武器軟膏をめぐって
第十五章 後期ルネサンスの魔術思想とその変貌
1 魔術思想の脱神秘化
2 ピエトロ・ポンポナッツィとレジナルド・スコット
3 魔術と実験的方法
4 ジョン・ディーと魔術の数学化・技術化
5 カルダーノの魔術と電磁気学研究
6 ジョルダノ・ブルーノにおける電磁力の理解
第十六章 デッラ・ポルタの磁力研究
1 デッラ・ポルタの『自然魔術』とその背景
2 文献魔術から実験魔術へ
3 『自然魔術』と実験科学
4 『自然魔術』における磁力研究の概要
5 デッラ・ポルタによる磁石の実験
6 デッラ・ポルタの理論的発見
7 魔術と科学
注
Yoshitaka Yamamoto, THE PULL OF HISTORY: Human Understanding of Magnetism and Gravity through the Ages (World Scientific, 2018).
http://www.worldscientific.com/worldscibooks/10.1142/10540
2018年2月刊行です。
『磁力と重力の発見』では、古代ギリシャ・ローマにはじまり17世紀にいたる「科学革命前史」が解き明かされます。とくにその第2巻であつかわれた1500年代ルネサンスの探究をいちだんと深め、17世紀科学革命に先行する「16世紀文化革命」という仮説をうちたてた次著が、その名も『一六世紀文化革命』(全2巻、2007年5月刊)。
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『磁力と重力の発見』全3巻は2003年度、〈制度としてのアカデミズムの外で達成された学問的業績、あるいは科学技術ジャーナリストの仕事のように学問と社会をつなぐ役割を果たした業績〉を顕彰するために創設された第1回パピルス賞(財団法人 関科学技術振興記念財団)、および第57回毎日出版文化賞(毎日新聞社)、第30回大佛次郎賞(朝日新聞社)を受賞しました。