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大人の本棚

ボードレール パリの憂鬱


およそ150年前のこと、「十九世紀の首都パリ」(ベンヤミン)は劇的な変化を遂げようとしていた。詩集『悪の華』では、「都市の形態の/移り変わりの速やかなこと、ああ! それは人の心の変化にもまさる」と謳ったボードレール。その詩人が発明した新しい形式こそ、「散文詩」であった。詩(韻文)でないものによって詩(ポエジー)を創出するという逆説的な試みは、もう一つの『悪の華』であるのみならず、その後の現代詩の流れを決定した文学的事件にほかならかった。日本でも三好達治の翻訳以来、多くの読者を生み出してきた散文詩集の傑作『パリの憂鬱』を、端正にして明快な新訳でここにお届けする。この散文詩集の成立過程をたどれるように、詩人晩年の手紙を附録として収めている。


「ボードレール パリの憂鬱」の著訳者:

シャルル・ボードレール
Charles-Pierre Baudelaire
1821年4月9日パリで生まれ、中学時代からロマン派の詩に傾倒して詩作を開始する。1845年、ドラクロワを称讃した最初の著書《一八四五年のサロン》を著わし、時代の絵画的課題を深く自覚的にとらえた尖鋭な美術批評家として世に出る。1847年バルザックの影響下に小説《ラ・ファンファルロ》を発表し、翌年から米国の詩人ポーの翻訳を開始するが、この仕事は彼の詩学だけでなく、のちの象徴主義の詩人たちに大きな影響を与えることになる。1948年の二月革命では深く政治的活動に関わるものの、積極的に社会的参画を企てるのは生涯でこの時に限られる。1857年、近代韻文詩史上の最高傑作《悪の華》を上梓するが、公衆道徳紊乱の科で断罪され、第二版が刊行されるのはその五年後である。《悪の華》以後、彼は自分の生きる時代の特異性(現代性)を詩に取り込むことを望み、散文による詩篇の制作に全力を注ぐ。《パリの憂鬱》の刊行は死後の全集においてだが、この詩集はやがて現代詩への「絶対の始まり」(ジョルジュ・ブラン)を画する作品と評価される。1864年経済的困窮解決のためにベルギーに赴き、1866年ナミュールの教会で転倒して脳障害の症状を生じ、翌年パリで死去。二つの詩集のほか、作品に《人工楽園》、遺稿《火箭》と《赤裸の心》、多くの文芸批評と美術批評がある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
渡辺邦彦
わたなべ・くにひこ
1936年岐阜県に生まれる。1956年早稲田大学教育学部国語国文科中退、1960年早稲田大学第一文学部哲学科(西洋哲学専修)卒業。卒後は1997年定年退職まで出版社数社で編集・翻訳業務に携わる。現在フリーエディター。訳書《ボードレールのパリ》(勁草書房、1992)、《シャルル・ボードレール》(作品社、2003)。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「ボードレール パリの憂鬱」の画像:

ボードレール パリの憂鬱

「ボードレール パリの憂鬱」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/296頁
定価 2,730円(本体2,600円)
ISBN 4-622-08069-9 C1398
2006年8月24日発行

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