ロラン・バルト著作集 9
ロマネスクの誘惑
1975-1977
OEUVRES COMPLETES
1970年代に入るとバルトは、「ロマネスク‐小説的なもの」の作家という新たな顔を見せるようになる。批評家としてではなく作家としてエクリチュールを考え、書く身体や快楽について語り、音楽や絵画をめぐる芸術論をすすんで発表するようになる。その傾向は70年代後半にさらに強まり、75-77年には「ロマネスク」と芸術論とがバルトの中心的な課題として鮮明な姿をみせてゆく。この時期に、もっとも長大な絵画論「ソール・スタインバーグ」が書かれ、「オペラ」をセミナーのテーマにする試みもなされたのだった。本巻に収められるのは、『彼自身によるロラン・バルト』から『恋愛のディスクール・断章』にいたるこの時期のテクストやインタビューである。自著の書評「バルトの三乗」、漫画版『O嬢の物語』への序文、「〈フィクション〉でない言説は存在しない」「サド‐パゾリーニ」、アヴェドンの写真集についてのエッセイ「かくのごとく」、そして「テンポの問題」など初訳の41篇は「小説」をみはるかす晩年のバルトを照らす出すだろう。
「ロマネスクの誘惑」の著訳者:
- ロラン・バルト
- Roland Barthes
- 1915年生まれ。フランスの批評家・思想家。1953年に『零度のエクリチュール』を出版して以来、現代思想にかぎりない影響を与えつづけた。1975年に彼自身が分類した位相によれば、(1)サルトル、マルクス、ブレヒトの読解をつうじて生まれた演劇論、『現代社会の神話(ミトロジー)』(2)ソシュールの読解をつうじて生まれた『記号学の原理』『モードの体系』(3)ソレルス、クリテヴァ、デリダ、ラカンの読解をつうじて生まれた『S/Z』『サド、フーリエ、ロヨラ』『記号の国』(4)ニーチェの読解をつうじて生まれた『テクストの快楽』『彼自身によるロラン・バルト』などの著作がある。そして『恋愛のディスクール・断章』『明るい部屋』を出版したが、その直後、1980年2月25日に交通事故に遭い、3月26日に亡くなった。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 中地義和
- なかじ・よしかず
- 1952年生まれ。1976年、東京大学教養学科卒業。1985年、パリ第III大学で博士号取得。1986年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授。著書Combat spirituel ou immense derision.Essai d’analyse textuelle d’Une saison en enfer(Corti, 1987)、『ランボー 精霊と道化のあいだ』(青土社)『ランボー 自画像の詩学』(岩波書店)ほか。訳書 ル・クレジオ『黄金探索者』(新潮社)『ランボー全集』(共編訳、青土社)コンパニョン『近代芸術の五つのパラドックス』(水声社)ほか
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 石川美子
- いしかわ・よしこ
- 1980年、京都大学文学部卒業。東京大学人文科学研究科博士課程を経て、1992年、パリ第VII大学で博士号取得。フランス文学専攻。現在、明治学院大学教授。著書『自伝の時間――ひとはなぜ自伝を書くのか』(中央公論社)『旅のエクリチュール』(白水社)ほか。訳書 モディアノ『サーカスが通る』(集英社)フェーヴル『ミシュレとルネサンス』(藤原書店)『記号の国』(ロラン・バルト著作集7、みすず書房)『新たな生のほうへ』(ロラン・バルト著作集10、みすず書房)ほか。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
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