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神話論理 III

食卓作法の起源

L’ORIGINE DES MANIERES DE TABLE


〈第I巻の表題となった「生のものと火にかけたもの」の対立は料理の不在と存在との対立であった。第II巻では、われわれは料理の存在を想定したうえでその周辺を探索した。すなわち料理の手前にある蜜と、料理の向こう側に位置するタバコに関する慣習と信仰である。同じ方向にしたがいつつ、この第III巻では料理の輪郭をたどった。すなわち料理の自然の側に位置する消化と、文化の側に位置する調理法から食卓作法までの広がりとである。……食卓作法について言えば、それは調理の仕方に上乗せされた摂取の作法であり、ある意味では二乗された文化的加工とも見なすことができる。〉(本書542ページ)

第I巻のボロロ「鳥の巣あさり」に呼応して、この巻の基準神話に選ばれるのは、アマゾン川源流近くに住むトゥクナ族の、狩人モンマネキの神話である。主人公がカエルや鳥やミミズやインコと結婚しては別れ、際限なく続くかともみえるその物語は、次々に挿話が付加される通俗連載小説に似ていながら、なお明確な感覚的特性の対比によって組み立てられる神話の構造を保持している。神話の構造はどのように劣化し、系列の継起する「歴史」に変容するのか。カヌーに乗って旅する月と太陽の神話とともに舞台は北アメリカに移動し、不均衡とリズム、周期性へと探求は進む。南北アメリカのインディアンの人々が自分たちの生きるこの世界を理解するための、思考の枠組みとしての神話に、いかなるモラルが内在するか。結びの章のペシミスティックな言明を、20世紀後半の激変を知る現代に、いかに読むことができるだろうか。


「食卓作法の起源」の著訳者:

クロード・レヴィ=ストロース
Claude Levi-Strauss
1908年ベルギーに生まれる。パリ大学卒業。1931年、哲学教授資格を得る。1935-38年、新設のサン・パウロ大学社会学教授として赴任、人類学の研究を始める。1941年からニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで文化人類学の研究に従事。1959年コレージュ・ド・フランスの正教授となり、社会人類学の講座を創設。1982年退官。アカデミー・フランセーズ会員。著書『親族の基本構造』(番町書房1977-78、青弓社2000)『人種と歴史』(みすず書房 1970)『悲しき熱帯』(中央公論社1977)『構造人類学』(みすず書房1972)『今日のトーテミスム』(みすず書房1970)『野生の思考』(みすず書房1976)『仮面の道』(新潮社1977)『神話と意味』(みすず書房1996)『構造・神話・労働』(みすず書房1979)『はるかなる視線』(みすず書房1986、1988)『やきもち焼きの土器つくり』(みすず書房1990)『遠近の回想』(共著、みすず書房1991)『レヴィ=ストロース講義――現代世界と人類学』(平凡社ライブラリー2005)『みる きく よむ』(みすず書房2005)『ブラジルへの郷愁』(みすず書房1995)他。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
渡辺公三
わたなべ・こうぞう
1949年に生まれる。東京大学大学院博士課程修了。現在、立命館大学教授。文化人類学専攻。著書『レヴィ=ストロース――構造』(講談社2003)、『司法的同一性の誕生』(言叢社2003)ほか。訳書 レヴィ=ストロース『やきもち焼きの土器つくり』(みすず書房1990)、『レヴィ=ストロース講義』(共訳、平凡社2005)ほか。編著『レヴィ=ストロース『神話論理』の森へ』(共編、みすず書房2006)ほか。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
榎本譲
えのもと・ゆずる
1946年に生まれる。東京都立大学大学院博士課程単位取得。現在、横浜市立大学ほか非常勤講師。フランス現代思想専攻。訳書 アンジュー『集団と無意識』(言叢社1999)、ドルト『無意識的身体像』1・2(言叢社1994)、ナシオ『精神分析7つのキーワード』(新曜社1990)ほか。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
福田素子
ふくだ・もとこ
1947年に生まれる。東京大学教養学部教養学科卒業。翻訳家。訳書 ジャンメール『ディオニューソス』(共訳、言叢社1991)、アンジュー『皮膚-自我』(言叢社1993)、ドリュモー『告白と許し』(言叢社2000)、ベルクテール『古代エジプト探検史』(創元社1990)、リューイン『コンプレクシティへの招待』(徳間書店1993)ほか多数。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
小林真紀子
こばやし・まきこ
1947年に生まれる。東京大学大学院修士課程修了。現在、津田塾大学非常勤講師。フランス語、ラテン語専攻。訳書 ジャンメール『ディオニューソス』(共訳、言叢社1991)、オドリクール/エダン『文明を支えた植物』(八坂書房1993)、ロジャーズ『世界巡航記』(共訳、岩波書店2004)。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次

凡例
記号表


第1部 バラバラにされた女の謎
I 犯罪の現場で
II つきまとう半身
第2部 神話から小説へ
I 季節と日々
II 日々の営み
第3部 カヌーに乗った月と太陽の旅
I 異国的な愛
II 天体の運行
第4部 お手本のような少女たち
I お嬢様であるとき
II ヤマアラシの教え
第5部 オオカミのようにがつがつと
I 困難な選択
II マンダン風臓物料理
第6部 均衡
I 一〇個組
II 三つの服飾品
第7部 生きる知恵の規則
I 傷つきやすい渡し守
II 料理民族学小論
III 神話のモラル

訳者あとがき(渡辺公三)
文献
神話索引
総合索引

『神話論理』全5冊のご案内

『裸の人』2の刊行をもちまして、レヴィ=ストロース『神話論理』は邦訳全5冊が完結いたしました。原著刊行から四十年越しのシリーズ完結です。

...続きを読む »

編集者からひとこと

『神話論理』の既刊三冊を読む順番について、著者レヴィ=ストロースが端的に、またていねいに、つぎのように説明しています。
「三巻のうちの第三巻から読み始め、その後に第三巻の終わりの部分と連接する内容から始まる第一巻に読み進めるということも何ら避けるべきことではない。 ...続きを読む »

この本の関連書


「食卓作法の起源」の画像:

食卓作法の起源

「食卓作法の起源」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/672頁
定価 9,030円(本体8,600円)
ISBN 978-4-622-08153-1 C1010
2007年9月21日発行

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