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中井久夫集3 1987-1991

世界における索引と徴候

著者
中井久夫

明仁天皇は、「ありがたみ」を求める人には影の薄い天皇に見えるかもしれないが、それは明仁天皇のほうで願い下げにしたい「ひいきの引き倒し」である。実際には強い意見の人man of strong opinionであり、しかも自己の影響力と、さらに重要なことに、この特性と限界とを自覚し、するどい質問の形で自己の見解を表明すると明言し、その指向するところ、社会の主流に対して、その「副作用」を警告し、これを滅殺することを自己の使命と規定しておられると思う。実際、発展developmentに生存survivalより高い優先順位を置いてきた戦後の日本に対して、機会あるごとに牽制球を投げ、また、戦争の後遺症を癒す努力を自己に課しておられると私は思う。
(「「昭和」を送る」 1989)

「死なないためにだ。俺は、死なないためにやっているのだ。芸術?そんなのんきなものじゃない」。私は、私の患者たちが描く、時として哀切な美しい画を思った。治癒するとみな平凡な画になる。しかし、才能が涸渇するのではない、必要がなくなるのだ。私の患者たちも「死なないために」やっているのだ。名古屋弁でいえば「必死こいて」――。
(「荒川修作との一夜」 1990)

第3巻には、多様な分野をテーマに精神科以外の読者を獲得していた時期の文章、長短26編を収録。


目次


意地の場について
治療にみる意地
医療における合意と強制
心に働くくすりは信頼関係があってこそ効く
青木義作先生
桜は何の象徴か
私の仕事始め――ウイルス学の徒弟時代
引き返せない道――冷戦最終期の予想
統合失調症の精神療法――個人的な回顧と展望
「昭和」を送る――ひととしての昭和天皇
微視的群れ論
R・D・レインの死
荒川修作との一夜
世界における索引と徴候
「世界における索引と徴候」について
ささやかな中国文化体験
「頑張れ」と「グッドラック」
サリヴァンの統合失調症論
一つの日本語観――連歌論の序章として
戦後に勇気づけられたこと
ロシア人
見えない病気の見えない苦労
待つ文化、待たせる文化
花と時刻表
私と現代ギリシャ文学
家族の深淵――往診で垣間見たもの

解説3 最相葉月
掲載文・書誌一覧


著訳者略歴

中井久夫
なかい・ひさお

1934年奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。文化功労者(2013年度)。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

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「世界における索引と徴候」の画像:

世界における索引と徴候

「世界における索引と徴候」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/352頁
定価 3,456円(本体3,200円)
ISBN 978-4-622-08573-7 C0311
2017年7月10日発行

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