みすず書房

異議申し立てとしての宗教

判型 四六判
頁数 464頁
定価 6,600円 (本体:6,000円)
ISBN 978-4-622-08662-8
Cコード C1010
発行日 2018年7月10日
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異議申し立てとしての宗教

「〈宗教的なるもの〉とは、宗教とは異なる、世俗世界性のひとつの条件であって、宗教的というよりはむしろ世俗的な身振りである、というふうに定義しなおすことができるのではないでしょうか。〈宗教的なるもの〉が孕む多くの概念は、コミュニティ内における人間同士の関係性や、人間のみならず動物をも含んだ関係性を司るものであって、この世界における世俗的な生の様式にかかわるものなのです」。
サイードの高弟であり、文化研究/ポストコロニアル批評の領域に宗教(とくに改宗)というモメントを導入した人文学者ヴィシュワナータンの、日本語版オリジナル編集による論文集である。
ヴィシュワナータンはまず、「英文学はインドで誕生した」という新説でデビュー。そして、世俗社会による宗教の抑圧を批判的に検証し、宗教的異端がじつは世俗主義の生みの親であり、かつ批判の根拠にもなりうるというテーゼを、アンベードカル(インド独立の指導者)やラマーバーイー(フェミニズムの先駆者)による「改宗」という行為を通じて論証する。
さらに、オカルティズムや神智学など、西洋キリスト教的世俗主義とは異なる、異他的でオルタナティヴな知の系譜のうちに、世俗社会へのラディカルな批評性を読み取る。懇切な解題とインタヴューをも収録し、ユニークなヴィシュワナータンの活動の歩みが一望できる画期的な論文集。

目次

まえがき

第一部 世俗批評を越えて
解題
第一章 サイードの遺産(レガシー)——意図と方法
第二章 〈英文学〉の制度化と表象=代理/代表(リプレゼンテーション)の問題

第二部 世俗批評としての改宗
解題
第三章 平等への改宗——不可触民解放の指導者・アンベードカル
第四章 沈黙させられる異端——キリスト教に改宗したバラモン女性・ラマーバーイー

第三部 異端批評に向けて
解題
第五章 異他的知の枠組による世俗主義の再考
第六章 日常業務としてのオカルティズム——神智学による世俗と神秘の接合
第七章 「動物は魂を持つのか?」——神智学と苦痛する身体

巻末インタヴュー
あとがき

文献表
人名索引 事項索引