みすず書房

戦争へと向かう雄叫びが響く昭和16年、一冊の評伝が世に出た。クララ・シューマン——書簡や日記、家族の回想記をもとに気品ある美しい日本語で書かれたこの評伝は戦争下の日本人の心を打ち、5年後に著者が亡くなったのちも、改版を重ねながら読み継がれていく。
天才少女として楽界にあらわれた当初より、クララはセンセーションを求める聴衆の期待から遠く離れ、内面的で静かな音楽的境地を守って、演奏に純粋さ、精神性を加えていった。ピアノによって、作曲者と聴衆の間に温かな感情の交流を虹のごとくかける、たぐいまれなインタープリター。非凡な許婚者との恋、音楽的・精神的に豊かにされた夫婦としての日々。シューマンの没後、40年にわたる年月を彼女はピアノとともに、恵まれた友情とともに生きた。
メンデルスゾーンやショパン、シューマン、ブラームスら、翼ある人々とロマン派の時代を織りなしたクララ・シューマンの「女の愛と生涯」(Frauenliebe und Leben)。

目次

凡例
著者によるはしがき

第一章 幼女時代 1819年-1827年
第二章 初舞台 1827年-1828年
第三章 ロバート・シューマンの登場
第四章 翼ある人々 1828年-1831年
第五章 クララ パリに行く 1831年-1832年
第六章 芽生え 1832年-1833年
第七章 霜降る日 1834年-1835年
第八章 春を待ちつつ 1835年-1837年
第九章 嵐
第十章 クララ ウィーンに行く 1837年-1838年
第十一章 恋文
第十二章 ひとり旅 1838年-1839年
第十三章 戦いは終わりぬ 1839年-1840年
第十四章 春、光と雨 1840年-1844年
第十五章 ドレスデンに 1845年-1847年
第十六章 ドレスデンの革命 1847年-1850年
第十七章 秋近し、ライン河畔に 1850年-1853年
第十八章 ヨハネス・ブラームス 1853年-1854年
第十九章 斜陽
第二十章 夕翳りつつ 1854年-1855年
第二十一章 終焉 1855年-1856年
第二十二章 放浪の年 1857年-1862年
第二十三章 バーデン 光の谷 1863年-1873年
第二十四章 ヨハネスをめぐりて
第二十五章 悲哀限りなく 1863年-1873年
第二十六章 余光 1878年-1889年
第二十七章 日没 1889年-1896年

付録1
付録2
編集部註
作品リスト
人名索引

造本について



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