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2017.07.11トピックス

急進的啓蒙とは。自由・平等・理性・人権概念の普遍性と現代的意義を問う

ジョナサン・イスラエル『精神の革命――急進的啓蒙と近代民主主義の知的起源』森村敏己訳

急進的啓蒙とは何か。著者の「序文」はこう書き出される。

  • 近年、歴史家と哲学者によって、急進的啓蒙の主要な活動領域とその歴史全体の解明が急速に進んでいる。当初は地下世界の思想運動から始まり、その初期段階、つまり17世紀後半にはまったくといってよいほど公衆の目に触れることがなかった急進的な思想だが、18世紀になるとヨーロッパおよびアメリカで支配的な思想潮流だった穏健な啓蒙に対抗するなかで成熟を遂げる。そして、1770年代、1780年代、1790年代にアメリカ、フランス、イギリス、アイルランド、オランダにおいて革命の時代が始まると、一挙にその姿を現わした。同様にドイツ、スカンディナヴィア半島、ラテンアメリカ、その他の地域でも、民主主義的な反体制的地下組織のなかにこうした思想が見いだされるようになる。いまや急進的啓蒙は、近代社会の中核をなす平等主義的で民主主義的な価値や理想を基礎づけるうえで、主要な役割を果たした思想潮流として、そして最終的には政治行動として、広くその存在を認められている。
  • 急進的啓蒙とは一連の基本的諸原理を指しており、簡潔に整理すればつぎのような内容を含む。民主主義。人種と性における平等。生活様式における個人の自由。思想、表現、出版の完全な自由。立法プロセスおよび教育からの宗教的権威の排除。教会と国家の完全な分離。
  • われわれにとって中心的な位置を占める諸価値を純然たる抽象概念として考察するという場合には、歴史的文脈においてそれらを検討するという作業は必要ない。しかし、こういった態度、あるいは、これらの価値はフランス革命の発明品だとみなす態度には危険がともなう。というのも、このような態度をとることで、こうした諸概念がいかにして、なぜ、どこで、対立と論争のなかから最初に生まれてきたのか、どういった手段によって広く普及していた反対勢力を押しのけながら発展を続け、ついには、まずは知的領域で、次いで政治的な面でもヘゲモニーを握るにいたったのか、といった問題が見えなくなってしまうからだ。
  • 急進的啓蒙とは、歴史的にみれば、主としてポスト・キリスト教時代の西洋世界の基盤となる社会的・文化的な価値観をかたちづくった思想体系である。このこと自体が、この運動の歴史をきわめて重要なものとしている。しかし、こうした思想は、とりわけ多くのアジア、アフリカ諸国や現在のロシアにおいて、迫害され、抑圧されている多数の人道主義者、平等主義者、人権の擁護者たちに希望を与え、彼らの気持ちを奮い立たせているのだ。こういった人たちは、多くの場合不利な状況下でも、かたちを変えて復活した宗教的頑迷さ、抑圧、偏見に立ち向かい、女性やマイノリティ、同性愛者や背教者も含め、人間にとって根源的な自由と尊厳を力強く擁護している。彼らが直面している敵は今日、世界の多くの場所でその冷酷な支配を拡大しているように思われる。
    急進的思想の歴史が現在においても研究に値するテーマであり続けている最大の理由は、おそらく、いま述べたように、この問題が全世界的な広がりをもつからである。

啓蒙の主流をなす穏健派と、少数派ながら近代民主主義の形成に貢献した急進派、および反啓蒙、これら3つの潮流が織りなす思想のドラマ。
われわれがよく知るロックやヴォルテールなど穏健派に対して、著者はこの忘れられた急進派こそ現在につながる普遍的な価値の確立者であることをみいだし、その思想的源泉がスピノザにあるとする。
自由・平等・理性・人権・民主主義の生成過程など、当時の西欧の知的状況を検証し、今日的意義を問う。現代を代表する思想史家イスラエルの精髄。




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