みすず書房

新たな局面に入り、危機を孕む現代資本主義への視点

ウルリケ・ヘルマン『スミス・マルクス・ケインズ――よみがえる危機の処方箋』 鈴木直訳

2020.02.27

スミス、マルクス、ケインズ。18世紀、19世紀、20世紀を代表する経済学史上のビッグ・スリーは、彼らが生きたそれぞれの時代において資本主義の本質をつかみ、経済学を刷新した。そのポイントはどこにあるだろうか。

ひとつは、経済活動に参加する人々は、なぜ自らの意図と異なる現実を生み出すのかという問いである。それが、スミス「見えざる手」、マルクス「弁証法的発展」、ケインズ「貯蓄のパラドクス」という有名な概念となって現れた。

本書では、市場原理主義者スミス、革命理論家マルクス、恐慌の経済学者ケインズというステレオタイプから離れて、その経済思想の核心を、彼らの生涯と代表作『国富論』『資本論』『一般理論』を辿って明らかにする。

著者ヘルマンはドイツの経済ジャーナリスト。ドイツの戦後復興神話や中流幻想を的確に小気味よく分析した本で知られる。

いま資本主義は新たな局面に入っており、しかも危機を孕んでいる。新たな視点を与えてくれる、現代資本主義への処方箋。