みすず書房

世界で活躍するフリージャズ・トランペッターと最先端のデザイナーの対話。聴覚と視覚の感性領域を行き交い、制作のエッセンスがとびだしてくる。
近藤は18年間、アムステルダムを拠点に、ネゲブ砂漠・ヒマラヤ・アンデス山脈など大自然の中でエレクトリック・トランペットを吹くプロジェクト《地球を吹く》を続けてきた。ところが数年前から日本の自然の中で吹きはじめ、驚く。四季によって音色を変えないといけないほど日本の自然は微細。この自然こそ日本の底力だ。
佐藤は言う。優れたデザインは暮らしに溶けこんで無名であり、意識されない。世の中、何でもわかろうとするが、わからないから魅力的なのである。自分を空にして待つと、やるべきことが見えてくる……。
記号化したデザインはつまらない。ジャズもロックも死んで久しい。こぢんまりとまとまるな。どうしたら自分を壊せるか。人間以外、そして無意識とコミュニケーションしているか? もっとソウルフルにやりたいじゃないか。
インスピレーションと励ましに満ちた本。

[書名は「くうのき」と読みます]

目次

地球を吹く  近藤等則

第一章 おじちゃん、浮いてる
最短時間で世界記録をめざすには  日本仏教はファンキー  東京で田舎を体験した最後の世代  日本の自然が底力  森と木を同時に見る  日本語のジャズ、英語なまりのデザイン  誰がタンポポをデザインしたか  デザインはあいだをつなぐ  精霊こそデザイナー  向こう側に抜ける音  長く続くデザインを  感じるとわかるは違う

第二章 人以外とのコミュニケーション
Catch the wave波をつかまえろ  リズムとノリ  おいしい牛乳、牛さんにありがとう  デザインは交差点をつくるように  聴覚で見る、視覚で聴く  形と型と色  わからないから魅力的

第三章 宇宙にレコーディング
いろいろ集めてドラムセット  ジャズもロックも死んで久しい  空間芸術としての音楽  息は自らの心  四季で音色を変える  耳を澄ますと、心が澄む

第四章 ネットの悪魔
盧舎那仏にあいさつ  音と水を大切に考える都市  制作現場とコンピュータ  モノブレイン、ポンと押してジャスト  みんな同じで気持ち悪い  無意識とのコミュニケーション  「これ面白いね」は重なる  脳でつくった都市は暮らしにくい  否定形から入る思考習慣  どうやって自分を壊すか  地球に生まれておめでとう

自分をどこまで空っぽにできるか。  佐藤卓

書評情報

渡邊十絲子(詩人)
週刊新潮2014年7月24日号

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