みすず書房

近藤等則×佐藤卓『空の気』

自然と音とデザインと

2014.05.12

ネット万能社会、もっとソウルフルにやりたいじゃないか。

近藤  コミュニケーションは意識同士でやっているように思うけど、じつは誰と会っても、無意識のレベルで感じ合っている。
音楽で言えば、作曲と即興があるけど、作曲された音楽を演奏するのはマニュアル本だ。即興、ノリ一発には、そんなガイドブックなどない。どっちが気持ちいいか。

佐藤  デザインは、いろんな条件が比較的集まっているところを見つけて、束ねて、交差点をつくるような感じなんです。力をいれて考えるぞーって出てくるのではなくて、条件をできるだけ自由に泳がしてあげる。そうすると、ある時、パッと神経細胞同士がつながって、「気がつく」。

佐藤  音とか、水のふるまいとか、東京の場合、全然デザインされていない。水とか音を基準に都市を考えたら、なんと豊かなことでしょうね。
いつでも水が見える都市を考えることだって、日本の土木技術をもってすればできたはずです。水辺があれば鳥が舞い降りてくるでしょう。

近藤  もっとも大事なのは人間と自然のコミュニケーションです。いのちの大もとは自然で、人は自然から生まれたのだから、いのちの大もととコミュニケーションしていないやつが元気に暮らせるはずはない。

本書は、世界で活躍するフリージャズ・トランペッターと最先端のデザイナーの対話。
制作の根っこを語ります。
わたしたちは脳で考えすぎる。わからなくても、感じていればいいのではないか。
体が感じると、心が広がっていく。
わからないから興味をもつ。魅力的なわからないものに出会うと、なんだ、これは! と思う。わからないから魅力的なのだ。

そもそも日本文化はどこかあいまいで、西洋文化にくらべていつも浮いている。
「ずれ」や「はずし」が得意で、地球の重力から自由になって精神が遊んでいる。
そしておのれを空にしておけば、なんでも入る。
やるべきことが見えてくる。
不安定でいい。「おじちゃん、浮いてる」で行こう。
インスピレーションと励ましに満ちた本。

佐藤卓(左)と近藤等則(右)