みすず書房

みすず書房の創業者、小尾俊人(おび・としと 1922-2011)は、敗戦の年23歳で復員し、その暮れに、焼け野原の東京で新しい出版社を始めた。
人脈はゼロで、日本の社会も混乱していた。そこから〈ロマン・ロラン全集〉や『夜と霧』の刊行にいたるまで、どんな試行錯誤と奮闘があったのだろうか。小尾青年はどのような出版を志し、どんな人間だったのか。
著者の宮田昇は、翻訳権を仲介する日本ユニ・エージェンシーを長らく率いた。その間、小尾と仕事で関わりながら、さまざまな局面で親交を深める。宮田は、少ない資料をつき合わせ、小尾の故郷に足をはこび、関係者を捜しだし、この出版人の等身大の姿を描きあげた。読者はきっと、つねに時代と向き合おうとした小尾が戦後史のなかにきちんと位置づけられ、それによって物語の地平が広がるのを発見するだろう。
小尾の日記「1951年」と、月刊「みすず」初期の「編集後記」を併録する。みすず書房創立70年記念出版。

(カバー写真 神田神保町の本屋街を行く小尾俊人(2007年) 
撮影 城ノ下俊治)

目次


第一章 諏訪紀行——ルーツを訪ねて
1 永明寺山
2 上古田部落
3 岡谷・上諏訪
4 風樹文庫
5 教育者小尾喜作
6 みすず書房文庫
7 末子相続の旧慣

第二章 小尾俊人の戦後——塩名田から『夜と霧』まで
1 塩名田から
2 創業まで
3 美篶書房誕生
4 〈ロマン・ロラン全集〉の創刊
5 出版恐慌と手形不祥事
6 再出発と人脈
7 社運を懸けて
8 『夜と霧』まで

第三章 出版者小尾俊人の思い出
1 「本が生まれるまで」
2 自分で自分を作る
3 「多田の本屋の親爺にあらず」

付録 小尾俊人の遺した文章から
1 日記「1951年」
2 月刊「みすず」編集後記

あとがき
小尾俊人年譜

書評情報

佐久間文子(文芸ジャーナリスト)
新潮452016年6月号
著者インタビュー・待田晋哉
読売新聞「Culture」2016年6月4日(土)夕刊
門井慶喜
週刊文春「文春図書館」2016年6月16日号
信濃毎日新聞
2016年7月2日(土)
石田祐樹
朝日新聞「著者に会いたい」2016年7月3日(日)
南陀楼綾繁(編集者)
週刊読書人2016年7月8日
(鳥)
サライ2016年8月号
図書館・今月のおすすめの一冊
広報みずほ(岐阜県瑞穂市役所)2016年9月1日
奥武則(法政大学社会学部教授)
都市問題2016年12月号

関連リンク

WEBRONZA[書評]松澤隆・評 宮田昇『小尾俊人の戦後』(2016年06月16日)

松澤隆氏(編集者)による書評「夜とヘアのあいだの星の時間」WEBRONZAに掲載。「とくに第1章が出色。(…)この章の錆びた輝きは格別だ」