みすず書房

ピネベルク、明日はどうする!?

KLEINER MANN - WAS NUN ?

判型 四六判
頁数 400頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-08594-2
Cコード C0097
発行日 2017年6月20日
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ピネベルク、明日はどうする!?

時はワイマール共和国末期、空前の大量失業時代。
彼、ピネベルクは北ドイツの町で簿記係として働くホワイトカラーの23歳。彼女、「子羊ちゃん」ことエマは22歳。バルト海に面した町の労働者階級の家の娘。どこにでもいる、互いに夢中の若い二人。
予期せぬ彼女の妊娠で、なりゆきとはいえ、希望にみちて結婚し、新生活に入った二人だが、ピネベルクは理不尽な解雇にあい、夫婦は就職のつてをたどってナチス台頭前夜の首都ベルリンへ——。
さまざまに渦巻く駆け引き、幾多の障害、困難が次々に二人の前に立ちはだかる。

〈きっとうまくいくから。わたしたちはきっとうまくいくって、わたしはいつも信じてる。わたしたち、勤勉で、節約家でしょ。まっとうな人間で、おちびちゃんが生まれてくるのを望んで、喜んでいる——そんなわたしたちが、うまくやっていけないはずないじゃない? そうじゃなきゃ、おかしいわよ!〉

ヒトラーの政権掌握前夜、明日をも知れぬ、数百万の名もなき人々=しがない民草を次々にのみこんでゆく貧困と孤独、絶望がピネベルクに襲いかかる。打ち砕かれ、転げ落ちようとする彼の前に灯された小さな、暖かい光とは……?
没後に出版され、近年にリバイバルヒットとなった『ベルリンに一人死す』の作者ハンス・ファラダの名を一気に世に知らしめた出世作にして、超ロングセラー、ついに公刊。

目次

プロローグ  なにも考えていなかった二人

  ピネベルクは子羊ちゃんの身に新しい事件が起きたと知り、一大決心する
  メルシェルの母さん——メルシェル氏——カール・メルシェル  ピネベルク、メルシェル家の騒動に巻きこまれる
  愛とお金をめぐる夜のおしゃべり

第一部  小さな町

  結婚生活はきちんと人並みにハネムーンではじまった。でも——シチュー鍋は必要なのか?
  ピネベルクが挙動不審になり、子羊ちゃんは謎を解こうとする
  ピネベルク夫妻は引っ越しの挨拶に行き、大いに泣かれる。ひっきりなしに鳴る婚約記念の時計
  謎のヴェールが剥がされる。ベルクマンとクラインホルツ。ピネベルクはなぜ結婚できないのか
  なにを食べればいい? ダンスしてもいい相手は誰? いますぐ結婚しなければならないのか?
  いじめがはじまる。ナチのラウターバッハと、女たらしのシュルツと、隠れ既婚者、窮地に追いこまれる
  エンドウ豆スープをつくり、手紙を書く。でもスープが水っぽい
  クラインホルツが面倒を起こし、クーベも面倒を起こし、社員たちは尻込みするが、ついに誓いを立てる。インゲン豆はまだ見えない
  いつもは用事などないピネベルクがピクニックに出かけ、騒動が起きる
  ピネベルクは自分の天使と、クラインホルツ家のマリーちゃん相手に戦ったが、時すでに遅し
  フリードリクス氏とサーモンとベルクマン氏。だが、すべては徒労に終わり、ピネベルク夫妻はなすすべがない
  一通の手紙が届き、子羊ちゃんはエプロン姿のまま町を駆け抜け、クラインホルツの事務所で泣き叫ぶ

第二部  ベルリン

  ミア・ピネベルク夫人、交通を妨げる。彼女は子羊ちゃんが気に入り、自分の息子は気に入らず、ヤッハマンとは誰なのか説明する
  正真正銘フランス製の王侯用ベッド。でも家賃が高すぎる。ヤッハマンは職を世話する話を聞いていない。子羊ちゃんは懇願することを学ぶ
  ヤッハマンは嘘をつき、ゼムラーは嘘をつき、レーマンは嘘をつき、ピネベルクも嘘をつく。それでも彼は職を得て、おまけに父親まで得る
  小ティーアガルテンを歩く。ピネベルクは不安でいっぱいで、とても喜ぶ気分になれない
  ケスラーはどんな男か。ピネベルクはどうやって面目を保ち、ハイルブットはどんな救いの手を差しのべたのか
  販売員には三種類あるが、イェネッケ次長はどのタイプが好きか。バターつきパンの招待
  ピネベルクは給料をもらい、店員との交渉にしくじり、化粧台の持ち主になる
  子羊ちゃんはお客を迎え、自分を鏡に映してみる。その晩はお金の話はご法度
  ピネベルク夫妻の結婚生活の習慣。母と息子。ヤッハマンはつねに騎士の役を演じる
  ケスラーは秘密をあばき平手打ちを食う。でもピネベルク夫妻は引っ越さなければならない
  子羊ちゃんは家を探すが、どこでも子供は歓迎されない。でも気絶しそうになったおかげでいいことが起こる
  前代未聞の住まい。プットブリーゼが引っぱり、ヤッハマンが助ける
  予算を立て、肉は控えることに。ピネベルクは子羊ちゃんが変だと気づく
  香水を振りかけたモミの木と、二人の子を持つ母。ハイルブットは、きみたちは勇気があるといったが、ほんとうにそうなのか?
  坊やは昼食を食べなくてはいけないし、フリーダは人生の実例を見なければならない。もし彼女に二度と会えないとしたら?
  洗う食器が少なすぎる! おちびちゃんが生まれるまで。子羊ちゃんもすごい声を上げるかもしれない
  友人を訪問したピネベルクは、裸になるよう誘われる
  ピネベルクはFKKについてどう考え、ノートナーゲルさんはどんな意見か
  ピネベルクはビールをおごると言われ、花を盗み、子羊ちゃんに嘘をつく
  父親たちは子供を迎え、子羊ちゃんはプットブリーゼに抱きつく
  乳母車と、敵対する二人の兄弟。授乳手当はいつ支払われるべきなのか?
  四月の不安。だがハイルブットが助けてくれる。ハイルブットはどこに? ハイルブットが消えた
  ピネベルクは逮捕され、ヤッハマンは幽霊を見る。お茶抜きのラム
  招かれざる客。ヤッハマンは滋養にあふれる良きものを発見する
  ヤッハマンは発明者に。平凡な男は王様に。わたしたちは一緒!
  映画と人生。クニリおじさんがヤッハマンを誘拐する
  おちびちゃんが病気になる。若いお父さん、どうされました?
  五十歩百歩。異端審問官とフィッシャーさん。死刑執行までもう一回猶予を与えてやる、ピネベルク!
  ふたたびミア夫人登場。それはわたしのトランクよ! 警察はくるのか?
  俳優シュリューターとアッカー通りの若い男。万事休す

エピローグ  人生はつづく

  薪を盗むべきか? 子羊ちゃんはせっせと稼ぎ、坊やに用事を頼む
  主婦がわりの夫。すてきな水と、前が見えないおちびちゃん。六マルクをめぐる争い
  ピネベルク夫妻はなぜ自分たちの家に住んでいないのか。ヨアヒム・ハイルブットの写真センター。レーマンがクビになった!
  躓きの石たるピネベルク。忘れられたバターと保安警察。これほど暗い夜がかつてあっただろうか
  集落にやってきた車。夜の中で待つ二人。子羊ちゃんにはぜんぜん問題じゃない
  茂みのあいだに茂みが。そして昔の恋

訳者あとがき

関連リンク

「トピックス」

今夏、全国で劇場公開となるヴァンサン・ペレーズ監督作《ヒトラーへの285枚の葉書》の原作である『ベルリンに一人死す』(小社刊)。その作者、ハンス・ファラダ(1893-1947)の名を一気に世に知らしめた超ロングセラー。それが、本書です……