みすず書房

ウンベルト・サバ

Umberto Saba

イタリアの詩人。1883年トリエステで生まれた。母親がユダヤ系であり、誕生以前に父親が出奔したため、不幸な幼年時代を送った。中等教育を修了せぬままに就職したが、第一次大戦後、晩年にいたるまで郷里で古書店を経営した。最初『わが処女詩集』(1903)を自費出版するが、『詩集』(1911)により『ヴォーチェ』誌に認められる。次いで『軽くて漂うものたち』(1920)を、1921年には、『愛ゆえの棘』およびそれまでの作品を網羅して『カンツォニエーレ』を出版したが、エルメティズモの純粋詩が主流を占めてゆく時代の風潮に迎えられず、ごく一部の評者に認められただけであった。第二次大戦後、独自の詩学の展開のうえに編集しなおした第二の『カンツォニエーレ』(1948、決定版1961)を発表するに及んで名声が確立した。平明な口語による自伝的・物語的要素を素材とし、これを伝統的な詩法を巧妙に駆使して、透明な音楽性に支えられた詩行に変え、虚構化してゆくサバの手法は他に類がなく、モンターレと並んで20世紀イタリア最大の詩人といわれる。〔須賀敦子・記〕