みすず書房

社会主義とは何であったか。また何であろうとするか。今ほど、この問いが、切実な響きをもって発せられるときは、かつてなかった。
〈小史という標題のもとに、私は社会主義の歴史に関する厖大な文献の圧縮を目論んだのではなく、読者がある特定の時代や問題群を詳細に検討したいと思ったとき、そのためになるような多くの道標を設けようと試みたのである〉と著者は述べている。
まず社会主義形成の基礎を西欧思想の伝統のうちに探りつつ、人間と社会、資本と労働の問題を考察し、マルクスの社会理論および経済理論の要約と批判から、ロシア、西欧の社会主義の歴史的・批判的検討をおこなう。
著者は、S.ヒューズ、M.ジェイの師匠格ともいうべき思想史家また批評家であり、『リスナー』などに寄稿しつつ『マルクス主義』『帝国主義』などの幾多の著作で知られている。成熟期のマルクスの思想にもとづく〈民主的社会主義〉という立場にたってまとめられたこの〈小史〉は、社会主義について考える人びとに、拠えるべき視座を考えさせ、曇りない展望のために役立つであろう。