みすず書房

本書の方法の特徴はつぎの点にある。いわゆる法解釈学・法廷技術・立法作業といった法現象を、制度の側面からではなく、あくまで〈人間集団としての法律家社会グループ〉の側面から考察した点にある。法を具体的に創出してゆく法律家集団を中間項において、法と政治と経済という三者の相互の作用・反作用のプロセスを具体的に辿った歴史的分析は、一定の様式で支配層=エリートを創出する社会の指標を示しつつ、一方において近代の各社会構造の体質を見立てる処方箋ともなっている。こうして15世紀以来の各時代の法的エネルギーの中核的モメントはいかんなく明示された。これは新しい歴史学の先駆であり、社会史・政治史・経済史などとの隔壁を破って、ほかの歴史学との自由なコミュニケーションを可能にするものである。構想の雄大さ、視角の斬新さ、論証の多彩さは画期的著作の実感を読者に与えずにはいない。

目次

第1部 民衆と法
第1章 法律家身分の成立
第2章 法律家層の資質と精神構造
第3章 反法律家運動
第4章 宗教改革・人文主義思想と法律学

第2部 権力と法
第5章 法律家と権力
第6章 啓蒙絶対制下における自然法・官房学と法律学
第7章 啓蒙絶対制期における立法と法律家

第3部 学問と法
第8章 歴史学派の誕生
第9章 学問と国家権力との癒着
第10章 ドイツの知識社会
第11章 ドイツ法学の資質形成

第4部 革命と法
第12章 ゲルマニステンと政治的運動
第13章 裁判官層の自由主義化
第14章 プロイセン官僚制とラインラント
第15章 陪審裁判制
第16章 革命に対する法律家層の対応