みすず書房

弁証法的想像力

フランクフルト学派と社会研究所の歴史 1923-1950

THE DIALECTICAL IMAGINATION

判型 A5判 タテ210mm×ヨコ148mm
頁数 496頁
定価 9,130円 (本体:8,300円)
ISBN 978-4-622-01947-3
Cコード C3010
発行日 1975年7月 1日
備考 現在品切
オンラインで購入
弁証法的想像力

「社会研究所」あるいは「フランクフルト学派」が広い注目を集めたのは、1960年代後半の「叛乱」の季節のなかでであった。「研究所」の中心的メンバーであったホルクハイマー、アドルノ、マルクーゼらの影響は、新しい拠りどころを求める各国のニュー・レフトの間に大きく波紋をひろげた。しかし、「批判的理論」として概括されるかれらの思想の含む問題性は、むしろ「叛乱」の季節が終ったかにみえる最近になっていっそう注目されはじめているといえよう。それには、かれらの思想が20世紀西欧思想史においてもつ意味が次第に明らかになるにつれて、かれらの「否定」のもつラディカルな意味もいっそう根底的に明らかになってきたという事情があろう。

この点でいえば、1960年代後半のアメリカで、1930年代にナチスの手を逃れてアメリカに亡命した知識人の大移動に関する思想史的な研究がはじまり、ワイマール文化に対する関心が高まったことが、この亡命の波の大きなうねりの一つであったフランクフルト学派を思想史的に見直す動向を生み出したといえよう。「亡命経験」が過ぎ去り、ヨーロッパとアメリカの双方にとってこの亡命経験が何を齎したのかが改めて問題となったとき、フランクフルト学派の思想家たちの営為はより広い展望のなかに移し置かれて探究の対象となったのである。

この探究の一つの成果が本書である。著者のジェイは、おそらくはじめて、「社会研究所」をめぐる思想家たちの多様な営為を一つの展望のなかに囲いこんだ。これまで知られなかったこれら思想家の結びつきが明らかにされ、これまで知られなかったヨーロッパとアメリカの思想圏の交錯が解明されて、この展望は、さながら一個の20世紀思想史ともいうべき拡がりをもっている。それは、これら思想家集団の思想史的外延の広さでもあるが、ジェイは、フランクフルト学派についてはもちろん、20世紀西欧思想史を語るときに逸することのできぬ書物を書いたといえよう。

著者のマーティン・ジェイは、カリフォルニア大学バークレー校で教える若い俊秀の歴史家である。かれは1944年ニューヨークに生れ、ユニオン・カレッジ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス、ハーヴァード大学に学んで、ハーヴァードのH.スチュアート・ヒューズの下で博士号を受けた。本書は、この博士論文を根幹にして成っている。(訳者あとがきより)