みすず書房

生きられる時間 1

現象学的・精神病理学的研究

LE TEMPS VECU

判型 A5判
頁数 256頁
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-02226-8
Cコード C3047
発行日 1972年3月10日
備考 現在品切
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生きられる時間 1

本書はミンコフスキーの代表的な著書として、また時間論の名著として、長い間、その翻訳を待たれていたものである。
1927年に『精神分裂病』を著わした著者は、分裂病者の時間と空間における特殊な存在の形態、特異な世界への入口を模索しつづけていた。ベルクソン、フッサールの影響が色濃く影を落している本書はその延長線上にある。1933年、『生きられる時間』が生まれたときは、私費で千部刷らせたという。わが国でも幻の名著となっていたが、1968年ようやく、世界的な要望のうちに再版された。ミンコフスキーは、その序文のなかで次のように述べている。
「われわれが今読者に提供する書物は、もとのテキストの再版であって、第二版(改訂版)ではない。それは余分の労苦を払うことを惜しんだからではない。他の動機があったからである。まず個人的な動機として、この労作は、言ってみればただ一つの魂をなして流れでたものであるということである。より一般的な動機としては、私は、やはり思うに、手応えのある程度には、現代思想において時代を画した、ということができると信じているからである。……この著作の特徴は、現象学的・精神病理学的研究というその副題が示している。ふたつのものは、そこで密接に結合しあっている。アンリ・ベルクソンの影響をそこに見出すことは容易である。そこでは感情的接触の観念の代わりに、それよりはもっと広い、生命的接触の観念が立てられた。……現代の精神病理学における哲学的傾向性が出て来るのは、そこからほんの一歩である。哲学的と言われるこの流れが精神病理学において明らかにした与伴は、象徴的なものではなくて『事実』であるということである。」