みすず書房

科学史における数学

THE ROLE OF MATHEMATICS IN THE RISE OF SCIENCE

判型 A5判
頁数 296頁
定価 6,600円 (本体:6,000円)
ISBN 978-4-622-02459-0
Cコード C3041
発行日 1970年4月20日
備考 現在品切
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科学史における数学

本書は、西欧の知性が興り展開したときに数学の演じた役割、数学の明晰さや神秘さの起源、その普遍性と不可欠性などについて述べたものである。
それだけを取り出してみると、深遠には違いないが、ただの遊びにしかすぎない数学が、科学と結びつくときあの巨大な力を発揮するのはどうしてであろうか。
著者はまず、知性の力としての数学の独自性を生み出す決定的な推進力となった「数学的抽象」の本質を、現代数学・現代物理学と、この「抽象性」をついに持ちえなかったギリシャ数学・ギリシャ物理学との対比によって明らかにする。さらに、ギリシャ自然学がその発展の諸様相において示した独自性、とくにギリシャの哲学や文明一般に内在した限界を反映し、拡大するものとして作用したギリシャ数学の性格が論じられる。アイスキュロスからワイルまで150人の人物を語った個性的な評伝を付す。
豊かな学識と数学の本質に対する根源的な問いから生れた本書は、数学への新たな認識を鋭く迫るであろう。
著者は、ポーランド生れの著名な数学者。プリンストン大学におけるフォン・ノイマンの後継者として、解析学や確率論などの分野で活躍した。

目次

日本版へのまえがき
まえがき
序章

第一部 論文集

第1章 神話から知識への学・数学まで
数学とは何か/数学と神話/ギリシャ以前の数学/名には何があるのか/数学の普遍性/ギリシャ数学と現代数学の対比/ユークリッドの『原論』/興隆期の数学/前もって作られた数学/数学と科学の関係/数学の抽象性

第2章 科学史と他の歴史との相違
科学史の発達の緩慢さ/時代の趨勢と個性/原典に対する関係/ギリシャ科学の原典的根拠/主題についての制約/はなばなしさの追求/中世的精神/進歩と連続性/規約主義/科学の数学化

第3章 物理学の革命と数学の危機
T・S・クーンの主張/マックス・プランクの役割/数学の危機

第4章 アリストテレスの物理学(フィジカ)と今日の物理学(フィジクス)
物理学と数理物理学/物理学と哲学/物理学における時間/物理学と宇宙論/必然性と偶然性/コーラ(「空間」)とトポス(「場所」)/空間と物質/重力的空間/空虚/自然的過程/自然的過程のもつ意味の範囲/反対概念/運動の運動/単純な変化と複合的変化/アリストテレスのトポスの理論/一つの物理系としての宇宙/現実態と可能態/結論

第5章 力学の黎明期における数学の役割
17世紀以前/17世紀/18世紀/最小作用の原理

第6章 物理学における基本的数学概念の意義
1 乗法の意義
ギリシャ的量/物理的次元/比例/素数に関する定理
2 関数の意義
関数の起源/関数の最初の現われ/状態方程式
3 実数の意義
質と量/ベクトルとテンソル/スカラーの重要性
4 複素数の意義
物理学の複素数化/18世紀における複素数/光学における複素数
5 数学的空間の意義
時間‐空間の問題/アリストテレス以前の空間/アリストテレスにおける空間/空間の三次元性/時間についての数学的図式/空間‐時間の問題の将来

第7章 数学の本質
科学との関係/創造力のある公式/基礎論・数理論理学/反例/構成主義・近似/数学における空間

第8章 解析学の本質
1 解析学の意義
科学に対する関係/導関数/実数/量
2 発展の諸段階
無理数/面積と体積/集合論/解析幾何学/19世紀/20世紀
3 関数
高次導関数/一般の関数/羃級数/区分的に解析的な関数/フーリエ級数/解析的整数論/最小二乗法/実変数関数
4 解析学と空間
等角写像/自由度/テンソル関数

第二部 人物素描

訳者あとがき