みすず書房

「子どもの頃からフィクションが大好きで、『神州天馬侠』だの『ジャガーの眼』だのにうつつをぬかしたあげく、フィクション中のフィクションともいうべき哲学なんかやるはめになった。今でも毎晩床に入って眠りにつく前に小一時間この手の本を読む。

あらかじめ物色して枕元に用意してあるのだが、すぐに読んでしまうので、あわててまた買い集める。それが数十年続いているのだから、相当の量になる。もっとタメになる本にしておけば、今頃は豊かな学識をそなえていたろうにと後悔しないでもないが、好きなものは仕方がない。」

メルロ=ポンティやカッシーラーの名訳で知られ、『反哲学史』など多くの哲学書をおくってきた著者は、無類の本好き・映画好き・音楽好きであった。それは著者にとって思索と日常をつなぐ臍の緒のようなもの、ユーモア感覚を磨く場でもあった。

日夏耿之介、「心の旅路」、山田風太郎から、モーツァルト、ライプニッツ、ハイデガー、小野二郎、保坂和志、大塚博堂まで55篇。ジャンルを超えてフィクションの世界にのめりこんでいった「哲学者」がつづる初のエッセイ集。『哲学以外』という表題に、著者の遊び心が表れている。