みすず書房

二枚の便箋に、修正なしで一気呵成にプロポは書かれる。新聞への寄稿を皮切りに、アランのプロポは発表の場を変えながら、およそ30年にわたって書きつづけられた。

その長い年月には、ヨーロッパ全土をまきこんだ世界大戦があり、ベルクソンやフロイト、アインシュタインらによって新しい知の地平がひらかれた。こうした時代の状況や思潮に相対しながらも、それに隷従し埋没することなく自身の思考の運動を見つめつづけたのがアランだった。抜粋、要約、解説、紹介の類をしりぞけ、説明しすぎることを嫌い、読者の精神を目覚めさせるためには、あえて逆説を弄し文章に晦渋さを組み入れることも辞さない——その思考の軌跡は、真の思考の在り方へと読む者を導く。1925-1936の130篇を収録。