みすず書房

三本の苗木

キリスト者の家に生まれて

判型 四六判
頁数 344頁
定価 3,080円 (本体:2,800円)
ISBN 978-4-622-03099-7
Cコード C0016
発行日 2001年8月24日
備考 現在品切
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三本の苗木

〈同じ家庭でともに育った子どもたちのあいだには、よかれ、あしかれ、一生のあいだ、魂のうちにみなぎって消えない深い情感が流れている〉(あとがきの引用より)

キリスト者、植村正久を祖父に、その娘を母に、大森教会の牧師、佐波亘を父に生まれた三人の子どもたち。これは、その子どもたちによって、大正・昭和という時代を背景に描かれた、ある家族の肖像である。

少年の頃、電気の不思議に魅せられ、エンジニアへの道を歩み、東芝の社長となった長男。自由学園の教育を受け、若き日は闘病の日を過ごし、老年の問題と向き合う編集者となった長女。津田英学塾でよき英語教師にめぐまれ、戦中は情報局、戦後は駐留軍の民間情報教育部で働き、翻訳家に育っていった次女。きょうだい三人三様、時代の刻印を帯びつつ、それぞれ別の道を歩んだ。しかし、苗木としては確かに同じ土壌に育ったはずだ。家族愛、信仰、教育——祖父母、父母から受けたものを、子どもたちが思い起こしつつ書いた三つの物語、それが一筋の物語を、あざやかに織りなす。