みすず書房

認識問題 2-2

近代の哲学と科学における

DAS ERKENNTNISPROBLEM

判型 A5判
頁数 368頁
定価 6,600円 (本体:6,000円)
ISBN 978-4-622-03195-6
Cコード C3010
発行日 2003年10月17日
備考 現在品切
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認識問題 2-2

ニコラウス・クザヌスに始まり、デカルト、スピノザ、ライプニッツ、啓蒙の時代をへて、ヘーゲル、アインシュタインまで、ヨーロッパ近代全体の思想や諸科学の場や意味を辿ろうとする『認識問題』全4巻は、その大胆かつ詳細きわまる試みによって、20世紀思想史上に屹立している。それは、ドイツの碩学カッシーラーの、まさしくライフワークであった。

原書第2巻の後半部である本書は、ニュートン学派についての考察から始まる。全体の構成は「ニュートンからカントへ——18世紀における科学と哲学」「批判哲学」の二部から成る。ニュートンを筆頭に、ダランベール/バークリー/オイラー/モーペルチュイ/プルーケ/ボスコヴィチ/ライプニッツ/ヴォルフ/リューディガー/ロック/ヒューム、そしてカントを俎上に載せ、哲学史の結節点を丹念に追跡しつつ徹底的に論究している。

目次

 第七部 ニュートンからカントへ——18世紀における科学と哲学

第一章 方法の問題
第1節 帰納の課題
理論と経験/アリストテレス的な自然観と近代の自然観/原因の問題/帰納の基礎づけ/記述という理想/経験と数学/事実と定義/ダランベールの経験論の二重性格/限界概念/精密科学の形而上学
第2節 理性と言語
概念と記号/記号論/言語の起源
第3節 力の概念
数学的確実性の起源/原因の概念と目的の概念/絶対的認識と現象的認識
第4節 物質の問題——化学
量的な自然観と質的な自然観/元素の新しい概念/自然概念の改造/フロギストン説とその克服/実体概念と量概念/哲学的分析と化学的分析/ラヴォアジェの哲学に対する関係

第二章 空間と時間
第1節 形而上学と思弁神学における空間と時間の問題
空間概念と神の概念/精神的な本質規定としての空間/感性的延長と知性的延長/根源存在の属性としての空間と時間/空間概念のパラドックス/心理学と存在論/空間と時間の観念性/関係概念としての空間と時間/「想像力」の形成物としての空間と時間/空間と時間の観念性と客観性
第2節 自然科学における空間と時間の問題
(a)ニュートンとその批判者たち
ニュートンの基本概念にたいするバークリーの批判/慣性の原理と恒星天/絶対空間と知性的空間/哲学と物理学における空間問題
(b)ニュートン学説の発展——レオンハルト・オイラー
要請としての「純粋空間」/数学的「真理」と形而上学的「真理」/絶対空間と慣性法則/科学的「抽象」の権利と特性/空間と時間の相対主義的見解/空間と哲学的「カテゴリー系」
第3節 空間と時間の観念性——無限なもののアンチノミー
カントとモーペルチュイ/ライプニッツの現象主義の展開/言語と思考の関係/観念論の主要な諸形態/ゴットフリート・プルーケ/「神的知性」の観念としての空間と時間/無限分割のアンチノミー/「連続性の迷宮」/フォントネルの『無限幾何学の基礎』/数学と形而上学/形而上学の「詭弁」
第4節 自然哲学における空間・時間問題——ボスコヴィチ
衝突過程の分析/連続性の要請/連続性原理の意味/幾何学的空間と物理学的空間/「可能性」と「現実性」の関係/測定の問題/観念的なものと実在的なもの

第三章 存在論——矛盾律と充足理由律
第1節
ライプニッツとヴォルフにおける真理概念/ヴォルフの理論にたいする批判——アンドレアス・リューディガー/数学的確実性の感性的基礎/存在論の批判/「単純概念」を突きとめること/哲学の方法/論理的真理と形而上学的真理/「単純な可能性」とその結合/経験と思惟/数学的抽象と哲学的抽象/神の概念
第2節
矛盾律と充足理由律/根拠と原因/実在根拠と認識根拠/因果概念の批判/認識の原則/総合的原則の問題

第四章 意識の問題——認識の主観的基礎づけと客観的基礎づけ
第1節
ロック哲学の継承と批判/精神的なものの記号的認識・連合心理学/形而上学と分析/創作力という概念/連合心理学への批判/関係のさまざまな類型
第2節
認識の心理的条件/真理概念の相対化/常識哲学への批判/真理の意識への関係/根本原理の心理学主義的解釈と理論学的解釈

 第八部 批判哲学

第一章 批判哲学の成立
第1節 1763年の著作群
カントとニュートン/数学的方法と哲学的方法/分析と総合/現実存在の概念と神の存在証明/「実質的原則」/論理的対立と実在的対立/因果の問題/カントと数学的物理学の経験理論
第2節 『視霊者の夢』(1765年)
現実と夢/倫理学と形而上学/形而上学の概念——カントとヒューム/経験と理性根拠
第3節 『視霊者の夢』から『教授就任論文』まで(1765-1769)
総合的原則の問題/分析的と総合的
第4節 『教授主任論文』の準備と完成(1769-1770)
実体の空間への関係/絶対空間と幾何学/世界概念のアンチノミー/悟性概念としての空間時間・総合の原則としての空間時間/「単一概念」としての空間時間/ニュートンの空間論への批判・感性界と英知界の区別/感性と数学/目的の国としての英知界/悟性と意志のアンチノミー
第5節 『純粋理性批判』へ向かう歩み(1772-1781)
認識の対象/結合の必然性と対象/時間関係の客観化/諸形式と諸機能・カテゴリーとしての実体

第二章 理性批判
第1節 主観と客観の形而上学的対立とその歴史的展開
「主観」と「客観」の分離/インドの観念論/ギリシア哲学における自我と世界/存在の概念と数学/存在概念へのプラトンの批判/真理と現実/プラトンとプラトン主義の二重の方向/アウグスティヌスと新プラトン主義/近代哲学における主観‐客観の図式/最高の体系概念としての経験
第2節 客観性の問題——分析的と総合的
知覚判断と経験判断/結合の必然性と対象——「対象性」の定義/現実性の基準/形式的な意味における自然と実質的な意味における自然/「自然の創造者」としての悟性/総合の統一と概念/分析判断と総合判断/総合的述語としての重さ(実例)/アプリオリな総合の経験的使用/「自然の体系」の要求
第3節 空間と時間
悟性と感性の分離/認識対象としての空間と認識手段としての空間/空間と悟性の総合/空間の超越論的解明/直観の「所与」/純粋総合の起源と目的/受容性と自発性/直観と「論証的」概念/絶対空間と絶対時間の問題/「無限な与えられた」量としての空間/主観性と観念性
第4節 自己意識の概念
主観的演繹と客観的演繹/連合心理学への批判/総合の三段階/図式機能と概念形成の問題/像と図式/感性と悟性の関係/自己意識の主観的統一と客観的統一/主観的時間と客観的時間/対象と自我/「現象における実体」としての対象と自我/観念論論駁/心理学の誤謬推理/内的経験と実体概念/機能としての自我と対象としての自我
第5節 「物自体」
「現象」の概念と自然科学/「自然の内的なもの」/無条件なものという概念/「物自体」の概念の演繹/理性批判における「物自体」の展開/受容性の相関項としての「物自体」/現象体と可想体/「超越論的対象」/可能的経験の全体/世界概念と経験概念/理性とその統制的原理/「物自体」と認識の相対性/倫理学の基礎づけ/因果性と自由

訳者あとがき
『認識問題』全巻目次
人名索引