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盲者の記憶

自画像およびその他の廃墟

MEMOIRES D’AVEUGLE

L’RUTOPORTRAIT ET AUTRES RUINES


本書の魅力、それはなによりも、デリダならではの絵画読解の実践をきわめて濃密なテクスト経験を通して満喫できる点にある。絵画という視覚芸術に盲者を描き込むという行為はきわめて特異な他者経験である。あらゆる他者経験と同じく、だが独特な形で、そこにはある還元不可能な暴力が含まれている。なぜなら、盲者は描かれたおのれの姿をけっして見ることができず、まったく無防備のまま他者の視線に引き渡されるからである。ここには一見どんな対称性もありえず、盲者は絶対的な受動性に固定されているようにみえる。だが、このような暴力を行使しつつ、西洋の多くの画家たちが、とりわけ素描画家が、これほど多くの盲者の姿を描いてきたのはなぜなのか? そこには差別的な見せ物趣味と区別されるどんな欲望が働いていたのか?

盲者が見るのではない限り、すくなくとも彼あるいは彼女の涙が見るのでない限りおよそいかなる愛もありえない……。本書には、素描というものに対する著者の特異体質的な情動が、それを普遍化しようとする哲学的努力とともにすみずみまで浸透しており、その意味で、彼の著作のなかでも一種特別な作品に仕上がっている。



著訳者略歴

ジャック・デリダ
Jacques Derrida

アルジェリア生まれ。フランスの思想家。高等師範学校卒業。脱構築、散種、グラマトロジー、差延などの概念を作り出し、ポスト構造主義を代表する哲学者と目される。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
鵜飼哲
うかい・さとし

1955年東京に生まれる。京都大学大学院文学研究科卒業。フランス文学・思想専攻。現在、一橋大学大学院言語社会研究科教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「盲者の記憶」の画像:

盲者の記憶

「盲者の記憶」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/200頁
定価 4,104円(本体3,800円)
ISBN 4-622-03199-X C1010
1998年11月16日発行

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