みすず書房

フランスはブルゴーニュ地方にある町ボーヌ。ワインの産地として名高いこの地には、赤、黄、緑など人の眼をうばう色調でつくられたボーヌ施療院がある。15世紀以来、この建物の中で人々は病いを癒し、老い、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン作「最後の審判」にみとられつつ、死をむかえたのだった。
15世紀前後のヨーロッパはペストが猛威をふるい、「皮剥ぎ」が横行し、「死の舞踏」が流行した時代、延々とつづく百年戦争のさなか、オルレアンの少女ジャンヌ・ダルクが奇跡のように登場し、同時にまたジド・レが凄惨をきわめていた時代だった。ホイジンガ『中世の秋』の舞台である。著者は、ボーヌ施療院建造へといたる。これら中世のさまざまな事件に思いをはせ、そこに数々の人間ドラマを発見してゆく…
死について、病院の起源についてなど、多層のテーマを重ねながら、決して「暗黒時代」とはいえない「もう一つのルネサンス」を、著者はしかと見つめている。感動の書き下ろし歴史紀行。図版多数。