みすず書房

イスラムの守護者として常にキリスト教世界と対峙し、東地中海に君臨した栄光のオスマン帝国。その実体は、多くの異教徒を抱え込みながら緩やかな統合を実現する「イスラム国家」だった。
本書が描くのは、その帝国が西洋との絶えざる交渉の中で、中央集権的な「国民国家」への変身を志し、もがき苦しみつつそれを果たしていく過程であり、また、多大の犠牲を払ってたどり着いた「国民国家」が決して終着点ではなかったことに気づき懊悩する姿である。近代トルコの味わった興奮と痛みは、おそらくその一国のみの経験ではあるまい。
イスラム世界に関心を抱く読者にとって、本書は絶好の水先案内となるだろう。内外における最新の研究を見据えて書き下ろした、気迫あふれる通史である。

目次

序章 カルロヴィッツ
第1章 前提——18世紀のオスマン帝国
第2章 改革への序章——セリム3世と「新体制」
第3章 中央集権化への道——マフムート2世の時代
第4章 タンズィマートの時代(1839〜1876年)
第5章 立憲政と専制政治(1876〜1908年)
第6章 第二次立憲政の時代(1908〜1918年)
第7章 独立戦争の展開とトルコ共和国の成立(1918〜1923年)
第8章 一党支配の時代(1923〜1945年)
第9章 複数政党制への移行(1945年〜1950年)
第10章 民主党の時代(1950年〜1960年)
第11章 第二共和制の時代(1960年〜1980年)
終章 第三共和政——21世紀を迎えるトルコ


あとがき
参照文献一覧
索引