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死を前にした人間

L’HOMME DEVANT LA MORT


ヨーロッパの中世から現代まで約一千年にわたる、死の迎え方、葬礼、遺言、死後のイメージ、追慕などの起源や変遷が、数多くの図像・遺言書・墓碑銘・文学作品によって、本書では考察される。
そして〈死〉は、五つの類型に整理される。まず、静かな諦観とともに共同体の一員として死んで行く「飼いならされた死」。ついで12世紀に始まる、現世へ執着し自分個人が不幸にも死ぬと感じる「己れの死」。ついで、常に死を身近なものと考えるルネサンス期から18世紀にかけての「遠くて近い死」。19世紀は家族や恋人の死が強い感情を喚び起こすロマン主義的な「汝の死」の世紀である。
では、現代の死は? 医療技術と衛生観念の進歩のもとで死は隠蔽され、瀕死者はもはや死の主体ではない。これをアリエスは「倒立した死」と名づける。
『〈子供〉の誕生』で、日常世界を支配する根深い感情すなわち心性(マンタリテ)の歴史叙述にみごとな成功をおさめた著者による、現代社会と先進文明への思索の結晶である。


目次


はしがき

第一巻 横臥像の時代

第一部 われらは皆死にゆく
第1章 飼いならされた死
わが身に死が近づいているのを察知して/急死/聖人の特別の死/死の床に横臥する人――平常の死の儀礼/公開性/公開の名残り――20世紀のイギリス/19-20世紀のロシア/死者は眠っている/花園の中で/不可避のものを甘受すること/飼いならされた死
第2章 聖人の近くに、教会の近くに
聖人の保護/郊外墓地教会堂――城壁の内側の死者/「教会のふところ」としての墓地/呪われた墓/法律は言う、教会内に埋葬することを禁ず/慣行は言う、教会は一種の墓地である/前庭墓地と回廊墓地/大共同墓穴/骨の山/さえぎるもののない大墓地/アジールにして居住地/大広場にして公共地/教会が聖人に取って代わる――どんな教会がか/教会の中のどこにか/誰が教会に行き、誰が墓地に行くのか――トゥールーズでの一例/イギリスの一例

第二部 己れの死
第3章 死期。一つの人生の追憶
心性の指針たる終末論/キリストの再臨/時の終わりにおける審判。生命の書/人生の終わりにおける審判/死骸趣味的主題/司牧伝道活動の影響か、高い死亡率の影響か/熱烈な人生愛/執着心と静物画/コレクター/挫折と死
第4章 来世のための保証
古風な儀礼――棺側祈祷、大愁嘆場、遺体の運び出し/死者のための祈り/昔の典礼――名前の朗読/劫罰への怖れ――煉獄と待機/ローマカトリックのミサ――死者ミサ/日曜説教の祈り/修道士的感性――教会の秘蔵品/後期中世の新しい儀礼――聖職者の役割/新しい葬送――聖職者と貧乏人の行列/以後棺と霊柩台で覆い隠される遺体/埋葬のミサ/埋葬当日の教会での葬儀/埋葬に続く日日を通じての祈祷/慈善のための寄付基金――それらの広告宣伝/信心会/現世と未来への保険――遺言書の機能。富の再配分/富と死/使用収益権/遺言を作成すること=良心の義務、個人的行為/遺言書――文芸のジャンルの一つ/飼いならされた死、再び
第5章 横臥像、跪拝像と霊魂像
墓が無名になる/石棺から棺と寝板への移行/貧者の〈大箱なしでの〉埋葬/存在の記念碑――遺体の埋葬地点/聖人と大人物に対する特別扱い/二つの死後の生――地上と天国10世紀末の情況/墓碑銘の復活/最初は身分証明票と祈り/通行人への呼びかけ/英雄的資質と道徳的美質に関する記念的かつ伝記的長口舌/家族感情/形態による墓の類型学――碑銘墓/壁面上の垂直墓――大記念碑/床面すれすれの水平墓/墓碑の空想博物館にて――横臥=安眠像/横臥像に似せて安置される死者/霊魂の移住/横臥像と跪拝像の結合――二層台墓/跪拝像/肖像画の回帰――デスマスク、記念全身像/横臥像と跪拝像の終末論的意味/墓地にて――墓の上の十字架/マルヴィル墓地/寄進を表示する墓碑――〈銘板〉/霊魂墓/奉納絵/家族の礼拝堂と地下埋葬所/空想博物館が教えること


第二巻 野性化した死

第三部 遠くて近い死
第6章 引き潮
日立たない変化/いまわの際の価値の低下/新しい往生術――死の想念とともに生きること/信仰の中で死に対する民間の信心/信仰の中での死の価値の下落の結末――自然でない死。調節。模範的大往生/自由思想家の死/死に対して安全な間隔をあけること/共同墓地に関するカトリックとプロテスタントの論争/パリの墓地の移転――トリエント公会議以降の教会の強大化/教会と墓地との関係の弛緩
第7草 どくろ絵
葬儀と遺言に見られる簡素さへの意志/喪の悲しみの非人格性/憂愁への誘い――どくろ絵/事物の真っ只中にある死――執着の終わり/墓の簡素さ――国王と特別な人のケース/野外の墓地の復権/文学における虚無の誘い/葬礼芸術における虚無の誘い/人を安堵させるのと同時におびえさせる自然――大地の暗闇、地下埋葬所/墓地の放置
第8章 死体
二人の医者 ザキアとガルマン――死体の生/解剖と防腐処理/万人のための解剖/個人的な解剖――死体の略奪/バロック期における性の本能と死の衝動の結合/18世紀の屍姦/ミイラの墓地/在宅するミイラ/生命ある死体について――現代のプロメテウス/サドにおける人間と自然の出会い/自然に対する城壁にはもろいところが二か所ある、性愛と死がそれである
第9章 生きている死者
仮死/1740年の医者たち――不安の増大/遣言人の慎重さ/19世紀における安置時間の延長/19世紀後半――鎮静化と医者の疑い深さ/医者と死/死への大恐怖の原因について

第四部 汝の死
第10章 大往生の時代
麻酔状態を思わせる快さ/フランスの場合――ラ・フェロネイ家/アレクサンドリーヌ・ド・ガイ/イギリスの場合――ブロンテ家/アメリカにて――移住民の書簡/アメリカの場合――慰めの書物/交霊術の方へ/肉体から離れた魂/装身具=思い出の品/煉獄にある霊魂/ミシュレの『魔女』/遺言書の中から、宗教団体への遺贈に関する条項が消えたこと/感情革命/悪の隠遁――地獄の終わり
第11章 墓地参詣
地形の中での墓地/墓地にいる悪魔/墓地と不衛生状態――医師と高等法院メンバー(18世紀)/高等法院のメンバーの急進主義――1763年の施行されなかった判決/高等法院の判決への反発/都市の外への墓地の移転――どんな墓地が移ったか(1765‐1776年)/イノサン墓地の閉鎖/新しい型の葬儀/パリ市民の、自分たちの死者に対する無関心さ/未来の墓地のモデル/墓地の汚れた実状――ごみ捨て場の死者たち/1801年の学士院のコンクール/ある死者崇拝に向かって/ガラス化された死者……/共和暦12年草月23日(1804年6月12日)の命令/19世紀の私有墓所/墓地参詣/田園共同墓地――建造物に満ちた墓地/肖像画と風俗画/墓地のないパリだと?/パリ市内に墓地を持ち続けるための実証主義者とカトリックとの同盟/戦歿者記念碑/ある田園墓地――ミノ墓地の場合/「わが家」

第五部 倒立した死
第12章 倒立した死
死の隠れ家/虚言の始まり/医療化の始まり/虚言の拡大/汚れた死/病院への移送/メリザンドの死/最後の瞬間は依然として伝統的であり続けた/とても控え目な葬儀/喪の悲しみの慎みのなさ/死は放逐される/医療設備拡充化の勝利/告知の再登場――品位保持への促し。今日的な死/倒立した死の地理/アメリカのケース
結論

補注
原注
訳者あとがき
主題索引


著訳者略歴

フィリップ・アリエス
Philippe Aries

1914年、ロワール河畔のブロワで、カトリックで王党派的な家庭に生れる。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
成瀬駒男
なるせ・こまお

1931年横浜市に生れる。1953年東京大学文学部仏文科卒業。修士。國學院大学文学部教授を務める。著書『ルネサンスの謝肉祭』(小沢書店、1978)。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「死を前にした人間」の画像:

死を前にした人間

「死を前にした人間」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/616頁
定価 9,072円(本体8,400円)
ISBN 4-622-03483-2 C1022
1990年11月21日発行

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