みすず書房

「丸山は日本における倫理的な個人主義と実質的な民主主義の萌芽に目をかけることを決してやめなかった」(ベラー)「丸山の思想はアジア全体の研究者一般に共通する新鮮さと妥当性を内包している」(ナジタ)「1960年の浅沼稲次郎刺殺事件に際し、右翼の青年をそうした暴力に駆り立てた状況を問題にする議論が巷にあふれるのを見た丸山は、人の行動には結果が伴うのだということを国民に想起させた」(ジャンセン)「オーウェルやハーバーマスのように、丸山は、自分の生きた時代に忠実だった」(グラック)。

戦後の世界に問題提起をつづけた丸山眞男については、1996年夏に氏が亡くなられて以来、さまざまな議論があった。本書は『みすず』誌96年10月号の「追悼・丸山眞男」特集にもとづく。第一部では、最後の文章「『矢野龍溪資料集第一巻』序文」の他に、丸山の思想形成に多大な影響をあたえた関東大震災を描いた九歳の時の作文「大震災大火災の思出」など少年時代の三編を加え、第二部ではベラーなど海外15名、国内10名の追悼文を集めた。多方向からの視点を編んだこのユニークな書は、丸山の人と思想を新たにみつめる。

目次

第一部
1 子供時代の作文
恐るべき大震災大火災の思出/大震火災中の美談/Ononotofu and the Frog
2 『矢野龍溪資料集 第一巻』序文

第二部 追悼
学者丸山眞男と友人丸山眞男  ロバート・N・ベラー
丸山眞男の思い出  テツオ・ナジタ
発見、再発見  J・J・オリガス
思想の力は国境を越えて  區建英
思想家、丸山眞男  バーナード・クリック
40年に及ぶ親交  ドロシー・ストーリー
丸山眞男さんのこと  ロナルド・ドーア
丸山眞男との出会い  ヴォルフガング・ザイフェルト
丸山眞男教授の思い出  カーメン・ブラッカー
丸山先生のこと  ヴォルフガング・シャモニ
丸山眞男を悼む  ジャック・ジョリ
信念と勇気の人  マリウス・B・ジャンセン
理性の情熱  キャロル・グラック
丸山眞男追悼  ベンジャミン・シュウォーツ
丸山先生との夕べ  スザンヌ・H・ヴォーゲル
丸山眞男先生  有馬龍夫
弔辞  家永三郎
「戦争責任論の盲点」の一背景  石田雄
丸山先生に遊び方を教える  入江昭
柊会のころ  小尾俊人
あの日、あの時のこと 記憶のなかの1968年12月23日  佐々木武
丸山先生への感謝——遁走曲風に  萩原延壽
わが青春の丸山体験  三谷太一郎
感謝のことば  高木博義
お隣の丸山先生  三雲マリ

年譜(作成・川口重雄)