みすず書房

現代物理学は宇宙の数学的秘密をあばく鍵を手に入れたと信じている。あらゆる自然法則を包み込む単一の描像、すなわち、物理的世界にかつてあり、現にあり、これから現われるであろうすべての事物の必然性を完全無欠な論理によって導く《万物の理論》の発見は間近いというのだ。

このような夢は新しいものではない。アインシュタインもまさにこのような万物の理論を探究するために、後半生を空しく、孤立のうちに費やしたのであった。しかし今日では、このような究極の説明を探ろうとするもくろみは、少数の一匹狼のような思想家や夢想にふける思弁家だけのものではない。それは理論物理学の主流に入り込み、世界中のもっともすぐれた若い科学者たちがその研究に加わるようになっている。

だが、このような状況はさまざまな疑問をなげかける。このような探究はほんとうに成功するのだろうか? 物理的実在の根底にある論理を理解することは可能だろうか? 基本的な物理学が完成し、それらの法則の内部に潜む細部の探究しか残らないような日が到来するのだろうか? これは抽象的な思考の新しいフロンティアなのだろうか? 万物の理論が目指している問題とは、いったい何であるのか?本書はこれらの問いに答えようとする試みである。