みすず書房

「シュルレアリスムについて、マルクス兄弟やバスター・キートンを語るようにして語れないものであろうか。瀧口修造も実によく笑う人であった。『滑稽なんですよ、実にふるってるんですよ』と言って、瀧口はク、ク、ク、ク、クと笑い続けて止むことがなかった」。「いよいよ20世紀も終わりの数年を目前にして、しかもコミュニスム、マルクス主義の雪崩を打つ退潮という予想もつかない状況の中で、思想も詩もかつてない空無化に曝されようとしている現在、シュルレアリスムという半ば伝説化して、若い世代にはとりわけ遠いものとなった思想、言語運動について、もう一度思い出してみることは意義のあることと信ずる。20世紀のあらゆる問題がここに衝突し、渦巻いているからだ。ネルヴァルとロートレアモン、サドとフーリエ、フロイトと精神分析、遠くかけ離れた二つのものの連結、そしてマルクス主義、二つの大戦とアメリカ……」。(著者)

はるかブルターニュにシュルレアリスムの淵源を辿り、その発展と衰亡の軌跡を検証しつつ、この特異な芸術=思想運動を広く20世紀思想史の只中に位置づける。バタイユ、レヴィ=ストロース、ラカン、瀧口修造、土方巽を視野に収めた、見晴らしのよい、刺激的なシュルレアリスム展望。