みすず書房

リルケ美術書簡

1902-1925

判型 A5変型
頁数 344頁
定価 4,400円 (本体:4,000円)
ISBN 978-4-622-04415-4
Cコード C1070
発行日 1997年12月12日
備考 現在品切
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リルケ美術書簡

27歳を前にしてリルケは、結婚して1年のクララの許から、パリにロダンを訪ねる。『ロダン』論執筆のためであったが、一方、事物の正確さ、厳密さと真実を、どのように詩で表現すべきか、己が〈詩の美学〉を構築するためでもあった。「どうにかして私も、事物をつくることができるようにならねばならないのです。彫刻的な、書かれた事物ではなく、——手仕事から生まれくる現実をです。/素材の実体にはよらない具体的な表現手段を見つけださねばなりません」(ルー・アンドレアス-ザロメ宛)。
造形作家が石を刻むように、詩人は言葉を刻まなければならない。造形美術の模倣ではなく、詩人自身の言葉を索めて、リルケは多くの造型作品に見入る。美の巡礼が始まる。世に云う『セザンヌ書簡』を超えて、数多くの書簡が書かれることになる。
近代芸術から現代芸術へと大きく変貌を遂げつつあった時代に、ロダン、ゴッホ、セザンヌからピカソ、クレーの作品の前に佇む日々は、己が〈芸術事物〉表現による『マルテの手記』あるいは『オルフォイスへのソネット』を産む過程でもあった。
死の前年までの書簡のなかに謐かに紡ぎ出される言葉は、孤独の裡に造型作品にかい合う修道僧のようなリルケの姿をくっきりと浮かび上がらせる。