みすず書房

性のアナーキー

世紀末のジェンダーと文化

SEXUAL ANARCHY

判型 四六判
頁数 408頁
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-04518-2
Cコード C3098
発行日 2000年5月25日
備考 現在品切
オンラインで購入
性のアナーキー

「本書は、19世紀の末とこの世紀末の特徴となっている性の危機と黙示録にかかわる神話、隠喩、イメージの研究であり、それが英米の文学、美術、映画にいかに表象されたかの研究である」。

小説家ジョージ・ギッシングによれば、1880-90年代は〈性のアナーキー〉の時代であって、性のあり方と営みを支配していたすべての掟が壊れたかに見える時期であった。男と女を区別していた境界線が錯綜し、かつてない混乱・問題が出来した。

〈余った女〉や〈新しい女〉が提示する問題群、小説界の女王ジョージ・エリオットの死後、ハガードやキップリングによるロマンスが世間の評判を呼んだ意味。また、ホモセクシュアルを暗示するジキル博士の秘密の小部屋やヴェールをかぶった女の存在、デカダンス・同性愛・フェミニズムの関係、梅毒とエイズへの眼差しなど、著者はさまざまなテーマを明快に分析し、現代の文化状況と比較・統合してゆく。

性のアナーキーによる恐るべき終末的警告と見えるものの中に、新たなる性の可能性を見据えた、フェミニズム批評の今日的な成果。

「ジェンダー論を中心軸にして世紀末の文化の諸相をこのようにまとめあげた本は他にはないはずである。それを読むというのは、既知のテーマ群がより大きな全体のなかにおさまってゆくのを目撃するということでもある。その意味ではこの本は、鬼面人を驚かすような新説をたてるものではなく、むしろ人を納得させる本という言い方ができるだろう……

ショウォールターの仕事は、女性の研究者の手になるめざましい仕事のともかく中心に位置していて、そうした仕事への導入口になるとともに、現時点におけるひとつの綜合点にもなっている」。(訳者あとがき)