みすず書房

雨水を飲みながら

あるフェミニストの回想

DRINKING THE RAIN

判型 四六判
頁数 304頁
定価 3,520円 (本体:3,200円)
ISBN 978-4-622-04655-4
Cコード C1098
発行日 1998年7月10日
備考 現在品切
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雨水を飲みながら

電話も水道もなく、ムラサキイガイと野草を食べる――たった一人の島暮らしは50歳のフェミニストをいかに変貌させたか? 自然と社会をめぐる省察=回想。

「私が可能性のかたちを学ぶために初めてひとりでこの島にやってきてから10年がたつ。私は今60歳で、顔には皺が刻まれ、左脚は調子が悪い。それでも、自分のまわりに密集して繁殖する命との一体感は、私の中でますます深まり続けている。10年にわたる長い旅の途中で、私の遭遇したひとつひとつの試練――仲間の私に対する失望、子供たちの疑いの目、愛の甘い誘惑、生命を脅かすものが押し寄せてくること――は、私を強くしてくれるばかりだった。空気は甘く、海は青い……波が私の足下で砕け、世界中のあらゆる海岸と私を結びつけ、うねるようにしてふくれあがり、愛の波となる」(「世界」)。
有名なフェミニスト=作家のA・K・シャルマンは50歳のとき、ニューヨークを離れてメイン州の島にたった一人で出かける。電話も水道もなく、野草と貝を食べる生活は彼女に何をもたらしたのか? 自然と瞑想に満ちた一人暮らしは、老いや恐怖、離婚と新しい恋人、自然破壊やニュー・エイジやチェルノブイリといった問題を見据えつつ、それらを乗り越え、ひとつの〈叡智〉に到達する。この明快かつ勇気に満ちた回想において、シャルマンは〈長い思索〉の喜びを賛美すると同時に、そこから生まれた豊かな意識を、多忙で喧騒に満ちた都会と結びつけている。メイ・サートン『独り居の日記』に連なる、強靱かつ繊細な精神と生きる歓びに満ちた一冊。

(本書カバー 堀正明「自律する影・ベッド」)

目次

日本の読者の皆様へ

第一章 島
第二章 本土
第三章 世界

訳者あとがき