みすず書房

明治日本の詩と戦争

アジアの賢人と詩人

SAGES ET POETES D’ASIE

判型 四六判
頁数 368頁
定価 4,400円 (本体:4,000円)
ISBN 978-4-622-04677-6
Cコード C1098
発行日 1999年11月25日
備考 現在品切
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明治日本の詩と戦争

1903(明治36)年、24歳で来日したフランスの俊秀が、約9か月間にわたって、みずみずしい感性をもって異質な文化と社会に接した印象と考察である。

本書は、まず14首の和歌をフランス語に訳し、それを核とする日本文化の概観に始まる。つづいて、宗鑑・鬼貫・芭蕉・蕪村など158句の俳句の翻訳と解説がなされる。これほど多数の俳句がヨーロッパに紹介されたのは初めてで、これに刺激されてリルケも三行短詩を試みるなど、文化交流の上で画期的な役割を果たした。

また1904年2月の日露戦争の開戦を東京で知ってから、およそ2か月にわたる日記が収められている。新聞各紙の論調を的確につかみ、井上哲次郎などとの会見記を含む国際的感覚に富んだ観察は、リアルタイムな記録として注目される。

なお、1912年に日本や中国を再訪した際の、孔子の墓所紀行を最終章に収める。

和歌や俳句に見られる繊細な情感、挙国一致で戦いにはやる激情、そのいずれをも過不足なく見きわめる良識(ボン・サンス)にもとづく、みごとな日本文化論である。