みすず書房

詩集『他人の空』によって戦後現代詩の世界に衝撃的なデビューを果たして以来、著者はほぼ半世紀にわたって詩と散文の領域でつねに先端に位置してきた。シュルレアリスム研究会の設立から、『ゴヤのファースト・ネームは』(高見順賞)を経て、超現実的な長篇小説『暗殺百美人』(ドゥマゴ文学賞)まで、その多様な業績を21世紀へと手わたすべく、ここに初めて著作集のかたちで集成した。

各巻は詩と散文からなり、詩は代表的な作品をセレクトし、全5巻を通すと自選による詩のアンソロジーとなるように構成されている。なかでも最終巻に収める『カンシャク玉と雷鳴』は未刊の傑作詩集である。

第1回配本(第1巻)は、『他人の空』をオリジナルのテキストに復元して収める。また、日本における最初の本格的な伝記として定評のある『評伝アポリネール』を加筆・改稿し、決定版としてお届けする。この他にも、シュルレアリスム関係のエッセー、フェリーニやブニュエルを扱った映画作家論を収録。

目次

I 詩
他人の空(全)
吊された者の木版画に/他人の空/砂の中には/世界中のあわれな女たち/空/牡牛よ/埃まみれの空/行列/血について/霧/死人の髪/理解/大きすぎる荷物/切り抜かれた空/帰つてきた子供たち/思い出された村/見る/一回/探す/途/影を背中につけた動物たち/言葉について

わが母音(抄)
わが母音/見えないものを見る/聖火曜日/詩人の魂

II 評伝アポリネール——二十世紀の列の先頭に立った詩人
I 幼少時代/II 「ライン詩篇」/III ローランサンの発見/IV キュビスム/V 「ミラボー橋」/VI 第一次世界大戦/VII 最前線のアポリネール/VIII 「美しい赤毛の女」
あとがき

III ダダ・シュルレアリスム・映画
アルファベット/浦島太郎の恍惚と不安——ホアン・ミロ論/ヘンリー・ミラーに触発されて/スワンベルグの汎女論的世界/アンドレ・マッソンの『世界の記憶』/映画『ブリキの太鼓』を観て/毒も悪夢も博物館へ——『皆殺しの天使』/フェリーニの『女の都』/ダダと「定型」/シュルレアリストの笑い

作品ノート