みすず書房

E.M.フォースターの姿勢

判型 四六判
頁数 360頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-04811-4
Cコード C1098
発行日 2001年9月10日
備考 現在品切
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E.M.フォースターの姿勢

「フォースターという作家には、何度読んでも、そのたびに前の読み方では肝心なところがわかっていなかった、もっとも本質的な部分が掴めていないといった思いをいだかされる経験をくりかえした……具体的な小さな事象についての解釈くらいなら、一応の納得はできる。だが、作品全体、あるいは彼の精神の世界全体となると靄につつまれたようで、どうもわかっていない気がする。多くの研究者たちはこの経験を〈神秘的〉の一語で片づけている感じだが、それでは説明にならない……。

ところが……(フォースターによる)『山猫』の短い書評を読んでいるうちに、〈優雅な怠惰〉といった言葉が、カヴァフィスの詩集の書評を読んでいたときに心にうかんだ〈晴朗な精神〉といった言葉とともに、フォースターの全体をつかむキーワードとしてふさわしいと思えてきたのだった。いわばこの〈真の教養人〉の呼吸の秘密がわかった気がしたのである」(著者あとがき)。

喜劇的精神とユーモアにみちた作家、また精神の「糊づけ」をきらう真の自由人。このとらえどころのない小説家=教養人の核心はどこにあるのか? 「岩」をはじめとする初期短編群から畢生の大作『インドへの道』へ、また女性に囲まれた生い立ちから同性愛やユニークな人生観まで、フォースターの人生と作品を詳細に探査・分析しつつ、その底に流れる根本的な〈姿勢=核心〉を明らかにする。半世紀にわたる精細な「読み」から生まれた、トリリングと並ぶ、第一級の作家論。